“もう呼ばないでくださいよ。きみから会いたいってことは、トラブルってことでしょうから”
あの時のあなたの言葉。しばらくの間ずっと、頭から離れなかった__
「んー!」
あたしはかなこ。ハロンタウンという、ガラル地方では田舎の街から旅立ち、無敵のチャンピオンと言われたダンデさんを破ってその座に就いた。とは言ってもまだまだ未熟者で、隣に住む永遠のライバルであり親友のホップをはじめ、たくさんの人たちに支えられながら今まで過ごしてきた。そして今年もまた、ジムチャレンジに向けての準備が始まろうとしている。
「かなこさん、こちらです!」
「えっ?これ着るの?」
ダンデさんが身に纏っていたものとは、またちょっと違ったデザインのユニフォーム。マントは勘弁してと頼んで了承してもらったけど、胸元にエンブレムはやっぱり恥ずかしい。気後れする。ピンク色でかわいらしくはあるけど、チャンピオンだし威厳がないといけないからって。もらったそれを着て街を歩くことになった。
「かなこ、似合ってるぞ!」
「そう?ダンデさんには敵わないよ」
迎えに来てくれたホップが第一声にそう言う。不思議だ…ホップが言うなら何でもそうだと思っちゃう。今でこそ大勢の人たちと話せるようになったけど、元々人見知りだから。気を許せるのなんてホップくらい。
「今度、暇作るからバーベキューするぞ!」
「やったー!しようしよう!」
年相応にはしゃいでるこの時間だけは、チャンピオンという重責から逃げられる。そんな気がして、思いっきりうんと背伸びをした。