水の香りに誘われて
ヒロイン:XY主人公


「まだかなあ……」

今日も待ち人は現れない。彼女__かなこは一人、ぼんやりと窓の外を眺めながら、溜息を零した。
それは彼女がチャンピオンになった際の話。水門の間に待っていた…、一人の男性。カロス地方では伝説の料理人とも謳われる、金髪に少しだけ目つきの悪い、美青年。

「他のジムリーダーや四天王の人たちは来てくれるのに…ねえ?」

そう相棒のゲッコウガに問う。だが彼もどう答えたら良いのか分からないのだろう…、やんわりと首を振った。

「…そっか、分からないよね、そんな事言われても」

チャンピオンになったとはいえ、その職務を遂行するつもりはなく、プラターヌ博士に相談し、ポケモン図鑑を完成させる事を決めた。あれから各地を転々としているが、相当数のポケモンがこの世には存在するらしい…なかなか埋まる気配を見せない。気晴らしにバトルがしたくてここ、バトルシャトーへと足を運び、案内状を使って強者たちと勝負をしているのだが、やはり待ち人は現れない。

「あらまあ、こんにちは。いらっしゃいなのよ」

今日は四天王の一人であるドラセナとバトルを繰り広げた。彼女も忙しいのか終わるなりリーグへと帰っていく。帰り支度をして、表の扉を開けた。

「ズミ……さん……?」

手をかけるなり反対方向から強い力が働いた。誰かがやって来たのだ…そう呑気に構えていれば、目の前にはまさに会いたかった彼が立っていた。

「かなこさん…まさかあなたがこんなところに入り浸ってるとは、思いもしませんでしたが」

フッと笑うと、中に入り直して互いのポケモンを向かわせる。その仕草にさえも目を奪われてしまいそう。

「…ズミさんあの!」

用は済んだ。彼の背中はそう言っていたが、かなこは声をかけた。

「何でしょう」
「また…、勝負、してくれますか……?」

微笑みかける表情はいつものクールな彼と違い、穏やかだった。誘われるがままにかなこの足は自然と、リーグに向かっていた。


bkm
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