ヒロイン:XY主人公
「寒い……」
まだ冬と呼ぶには早い時期。身体に吹き付ける風は冷たく、かなこはブティックで軽い羽織を探していた。
「…こんなところにいたの、かなこ」
自分を捜していたというカルムとカフェで昼食を取っていると、こんな一言がかけられる。
「…博士の事、好きなの?」
「………えっ」
なぜ突然そんな事を聞くのかと思った。もちろん、一回り以上離れているプラターヌ博士の事を素敵だと思ったのは1度や2度ではない。しかし、その度に自分はまだ子供で博士は大人なのだから…そう言い聞かせて心の奥底に仕舞ったつもりだった。
「…オレの勘違いかも、悪いね」
少し控えめに微笑むカルム。それからしばらく沈黙が続いたが、先程の事が気になって仕方がない。思い切って聞いてみると、意外な言葉が返ってきた。
「博士が最近…かなこが来ないって煩いから。図鑑埋めるのに必死なんですよって言ったけど、本当のところどうなの?好きになっていい相手じゃないから行かないの?」
…っ。目を逸らしたくても逸らせない位にジッとこちらを見る眼差し。それは時折切なさが混じっていて少しだけ、悪い心地がした。
「………好き、でも、博士は違う」
前に1度だけ、冗談で博士と付き合えたら、そう言った時にフラれた事を伝えた。
“ボクと?冗談だよね?かなこ。…だってキミとボクとでは、年が違いすぎるじゃないか”
「……。なるほど、ね」
意味深に微笑むと奢るよ、そう言って伝票をレジに運んでいく。その背中が何かを語りかけていたが、かなこにはその真意は読み取れなかった。
「…ありがとう、カルムくん」
「いや?この位。…それより」
「……っ!?」
耳に触れた息はとても熱くて、しばらくその場を離れる事ができなかった…。
“もし次もフラれたら、オレがもらってやるから、行ってきなよ”