「もしもし…。何でこんな時におやじ…あ、いや、ちょっと電話が遠くてね」
リニアでカントーとジョウトを往復して。シルフカンパニーを見ておきたくて…というダイゴさんに着いてきたんだけど。ちょうど電話がかかってきたみたい…だから、私は少し離れていようかな、そう思ったら、グッと腰を引き寄せられる。何かちょっと…、周りの視線が痛いんですけど……。
「あとはおやじの気持ち次第だと思うよ」
さすがに、何を話してるのかはわからないけど、相手はムクゲ社長なのは確か。それにどうやらダイゴさん、ホウエンに戻っちゃうみたい。
「うん、わかった。これから戻るよ、じゃあね」
電話が終わると、本当に申し訳なさそうに、ダイゴさんは言う。
「かなこちゃん…ボクは一旦、会社に戻らなければならなくなったんだ…。できればきみも、一緒にどうだい?」
「…え?でも、お仕事ですよね?私なら、こっちで一人でも大丈夫…「ボクが心配だから。…ね?かなこちゃん」
私の言葉を遮ってそう言うダイゴさんは必死で。何だかそれが嬉しくて、思わずぎゅっと抱きつくと、まずいな…とか言ってる。
「とりあえず…、帰ろうか?かなこちゃん」
「…はい」
帰路に着こうと外に出ると、こちらのリーグチャンピオン…つまり、ワタルさんを倒して、旅を続けてるというヒビキくんと会った。
「やあ、ボクはダイゴ。ホウエンリーグのチャンピオンだ」
そしてこちらは…と私の事も自己紹介してくれる。一通り挨拶を終えると、ヒビキくんはジムリーダーと再戦の約束をしてるみたいで、格闘道場に行ってしまった。
「ボクたちも行こうか、かなこちゃん」
「…はい」
そう言うダイゴさんに黙って着いていくと、ぎゅっと握られる手。それだけで…、大切にされてるかも、と緩む顔。あ、そう、ダイゴさん…、あんまりこっちに来ないから、私は切符でいいって言ったんだけど、リニアパスを買ってくれた。
「持っていても困らないよ、かなこちゃん。ボクからのプレゼント、まさか断ったりしないよね…?」
うっ…。そう言われたら、断れない…。ダイゴさん、そういうところずるいよね、本当に。