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「今日、クチバ港で花火が上がるみたいだね」

遅めの朝食を取って。明日はヤマブキシティのある、リニアに乗ってみたかったから、クチバシティは出ないとね、そう話していたところ。ダイゴさんが何やらチラシのような物を持ってきては、そう呟いてる。

「せっかくだから、行ってみましょうか!」

私の提案にうん!と頷くと、急いでヤマブキシティのポケモンセンターに荷物を預けに行き、クチバ港へ向かう。

「結構人がいますね…」
「うん…仕方ないね、こういうイベントは」

シシコ座流星群はダイゴさんと見れなかったから(ポケモンのりゅうせいぐんならこないだ見せたけど)、一人で盛り上がってる私とはたぶん…、対照的なダイゴさん。はぐれないように、という意味かもしれないけど、隅の方が落ち着くな、と手を引かれて、端の方へ移動する。

「わあ…!綺麗…!」
「悪くないね…こうしてきみと花火を見るのも」

ドーン!と大きな音がして、空一面に花火が打ち上げられると、握られる手。最後まで見終わると、少し待ってて?と一人取り残される。

“かなこ、こっち来なよ!”
“あたしは…、いいや”

小さい頃はね、男の子が苦手で、近所のお祭りだって、パパやママとしか行った事がなかったんだ。初めて友達と行った時も、男の子が集まってきちゃったらいつも、遠慮してたっけ。

「…何を考えているんだい?かなこちゃん」
「わぁ…!」

いきなり現れたダイゴさんは、大きな綿菓子を持っていた。二人で、分けよう?って。その仕草がいつものダイゴさんと違って、妙にドキドキしてる。

「少し…寄っていくかい?」

この歳になって。こんなにお祭りが楽しいと思ったの、初めてだ…。ダイゴさんといると、私の知らない世界がどんどん広がって、すごく楽しいし、それでいて…飽きないの。

「…大好き!ダイゴさん!」
「……っ!?かなこちゃん……」

重なった唇はちょっとだけ、甘い味がした。それは部屋に戻った後でも、ほんのりと余韻を残していた。


bkm
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