「…おう、行ってこい」
わざわざ見送りに来てくれたカゲツさんに挨拶して、私たちはジョウト地方の、アサギシティに向かう。久しぶりなだけに、私のテンションは上がりっぱなし。そんな私を飽きる事…ないのかな?ダイゴさんが笑顔を向けてくれている。
「…そう言えば船酔い、大丈夫だったかい?」
「え…?」
…っ!そうだった!こないだ、ミクリさんに…。
「…って!何でバレてるんですか!」
そう言うとははは…ってまた薄い笑み。ミクリさん…本当おしゃべりだな。それよりも仲良いんだね?って顔を近づけて言うもんだから、何も言えなくなる。
「これからは…距離感に気をつけてね?」
優しく微笑んではデッキの方へ消えていく。少しして戻ってくると外に出ようよ、とテンション高めで。
「趣味合わないけど、見てて飽きないからなのかな…」
ポケモン勝負が好きなのか、旅が好きなのか、それはまだわからない。でもポケモントレーナーとしては一番強くて、珍しい石のためなら旅をする人。笑いのポイントもずれてる気がするし、見た目はまるで釣り合わない。そんな彼なのに、一緒にいたいと思うのは、イケメンで思わせぶりだから…だけじゃないはず。
「…っ!?」
「かなこちゃん…こっち見て?」
いきなりぐいっと抱きよせられて、チュッと音を立てて唇が重なる。真っ赤になる私にダイゴさんは、本当飽きないな、って一言。
「…え?どういう意味ですか?」
「ふふ…そのままの意味だよ。かなこちゃんってね、何だか放っておけなくて。ポケモンみたいにふわふわしているし…」
…ん?ふわふわ…?でもダイゴさん、メタグロスが好きなんだよね……?
「そのコロコロ変わる表情とかね…何とも言えないよ」
うーん、ダイゴさんに説明を求めるのはやめよう。全く…、よくわからない。きっと、褒めるのも石に例えてとかなんだと思うけど。
「見えてきたね、アサギシティ」
「…あ、本当だ!」
少し身を乗り出せば危ないよ、と手を引かれる。程なくしてアサギシティに降り立つと、懐かしい空気。