「今日はもう遅いから、ボクの家に帰ろう?」
そう言われたけど、いいのかな…?近くにいるなら、挨拶…。
「お母さんに、挨拶しておこうか…?」
やっぱりこの人、エスパーかもしれない。私の言いたい事、すぐにわかっちゃうの。
「ふふ…かなこちゃん。どうかしたの?まさかボクが、エスパーだとか思ってるワケじゃあないよね…?」
フフフ…といつものように妖しい笑みを浮かべてくる。…本当ずるい。
「じゃあ…、お願いしようかな」
「…かなこ!」
私がそう言うなり、忘れ物よ!と出てきたママと、ダイゴさんがはちあわせ。
「…どうも。ホウエンリーグチャンピオンの、ダイゴです」
「…ど、どうも!かなこの母です!あ、先日は…って!これはだめ、なんでしたよね?」
…え?何?この会話。ママ…、やっぱり何か、変じゃない…!?そんな私の事なんかお構いなしに、二人は盛り上がってる。
「…もうこんな!イケメンの方にもらって頂けるなんて…!パパも大喜びよ、うふふ!」
「とんでもない!むしろボクの方こそ、こんな素敵なお嬢さんを…光栄です」
「ダイゴさん、これからもうちの子を、どうぞ宜しくお願いしますね?」
終いには握手までしてる…。ちょっと、有名人と結婚するみたい。…ってえ!?結婚…!?ち、違う違う…!
「…かなこちゃん?」
…ハッ!!最近…じゃないか、前から、気づいたら妄想が始まっちゃってる…!しかも、ダイゴさんと結婚する、って前提で。
「…そんなの考えてませんからね!」
ん…?何て言ったのかな?前半の方は声が小さくて聞こえなかった。しかもすたすたと先に行ってしまう。さっきボクはエスパーって言ったけど、カンは昔から鋭い方だ、何となく相手の気持ちはわかる気がする。…でもねかなこちゃん、ボクはきみの気持ちを、ちゃんと理解できているのかな…?ボクの独りよがりじゃなければいいんだけどね…。