あれから月日は流れて
「…はあ」

予想していた現実に、頭が冴えてくる。…昨日。ダイゴさんと泊まったこのホテルが、私たちの最後の思い出になる…そう思いながら眠りに就いた。記憶は曖昧だけど…、何となく明け方に出てったのは、気づいた気がして。それに…。

「…っ」

頬に触れた、温かい温もり。それは彼の優しい手じゃなくて……。本当に最後まで、ずるくて、掴めなくて…遠い存在だった。だからね…、まさか想いが通じ合う日が来るなんて、思ってもみなかった。

「…忘れなきゃ」

バシッと顔を叩く。彼と過ごした日々も、抱きしめられた温もりも。全部全部忘れて…、元の、彼に出会う前の私に戻るの。すうっと深呼吸をして、軽く目を閉じてみる。でも、思い出すのは…、ダイゴさんの事ばかりで…。また、一粒の涙が、頬を伝った。それほどまでに、もう…ダイゴさんへの気持ちが溢れてしまっている事に気づいた。途端に苦しくなって、ミクリさんに電話しよう…と思ったんだけど。

「…1週間。1週間だけ…頑張ろう」

そう決めて、ホウエンに帰る別ルートを見つけ出し、行った事のある街へ、ラティアスと共に行き直すことに決めた。ジム戦はさすがに回れなかったけど、まだ行ったことのなかった、ハクダンシティへと足を運んだ。ホウエン地方はのどかな田舎で、それはそれですごく素敵だし、ジョウト地方は、遠くまで行った事はないけど、古風ながらも住みやすい感じ。それに比べてカロス地方は…、街並みがすごくお洒落で、それでいて落ち着く感じ。どこを回っていても、それは感じられる。

周りの道路で新しいポケモンを探し、捕まえながらボックスのコたちと相談する。ラティアス以外は、新しい仲間にしてみたり(私にとってはラティアスが、一番のお気に入りだから)、久しぶりにレックウザと話してみたり。…周りのトレーナーには驚かれたけど。色んなトレーナーと戦って、またしてもカルムくんと再会して、一緒に旅立った仲間の事をお互いに教えあったり…あっという間に時間が過ぎて、いつしか、彼との事も忘れ始めていたんだけど…。

「ホウエンに戻るなら、ダイゴくんによろしく言っといてよ!」

プラターヌ博士…。だって仲良いよね?キミたち、と爆弾を投下していきましたよ…。結局、最後まで気持ちの整理がつかないまま、ホウエンに戻る事になったんだけどね…、いない間に強くなったし、何よりプラターヌ博士からもらったこのコが…、後々切り札になってくれるから、そう信じて。


bkm
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