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「…少し、黙って聞いてくれるかな」

返事の代わりにコクン、と頷いた。それから少しの間沈黙が続き…、ダイゴさんは少しだけ、自分の事を、話してくれたんだ。

「この広い世界で生きていく上で…自然について、ポケモンについて、もちろん…人間についても…、もっと学んでいかなくちゃいけないってね…考えたんだよ…、あの一件以来…ね。自分の足で世界を歩き回り、自分の眼で世界を見て、自分の肌で世界を感じる……こんな風な事が、また近い将来…できたらいいなと、思っているんだ…、きみのように…ね」
「…私は、とても…」
「かなこちゃんは…偉いよ。というか…羨ましい、というのが正しいのかな。ボクには、会社があるから…」

御曹司ってのも…色々と大変なんだな。そう気づかされた今日というこの日を…、私は忘れない。

「…くしゅん!」

自分のくしゃみで目が覚めた。何となく…、身体がだるい。時刻はまだ真夜中…だと思われる。隣からは規則的な寝息が聞こえてくる。だから多分、まだ起きる時間じゃない。

「水…飲もうかな」

するりとベッドから抜けて、冷蔵庫のミネラルウォーターを取った。ゴクゴクと音がする度に喉に染みわたっていくよう。少し寒気はしたものの、それはこの時間だからだよと自分に理由をつけて、再び寝室へ。そのままベッドに入ろう…と思ったけど。ヤバい私…、悪い顔してる…。たまには、いいよね…?いつも、悪戯っ子で、余裕たっぷり…に見えるダイゴさん。そんな人の、無防備な姿を、覗いてみたくなったんだ…。

「…」

そっとダイゴさんの寝顔に近づく。綺麗…。元々、端正な顔立ちだとは思っていたけど、目を閉じているせいか、それがより際立って見える…ふふ。更に私の悪戯は続く。そっと髪を撫でてみる。水色がかった銀髪は、見た目よりもずっとサラサラで、いつまでも触っていたくなる。自然と頬が緩むのがわかった…けど。

「え…っ!!」

突然強い力で手首を掴まれた。慌ててそっちを見ると…ダイゴさん!!!!その瞳は驚くほどまっすぐに私を見ていて…、ひどく申し訳ない気持ちになった。

「かなこちゃん…」
「…ごめんなさい、ダイゴさん…」

そう言うとふふ、と軽く笑って手を離してくれる。やっぱり…優しい人、なんだよね。


bkm
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