「ここにも、メガシンカにまつわる伝承があるんだ」
最も…とダイゴさんは続ける。既にその継承とやらは終わってるらしく、あんまり関係ないかな…と思いつつも、マスタータワーのすごさに圧倒されて、写真くらいは撮りましょうよ!と提案した。
「誰かいるね…」
「本当だ…」
マスタータワーに行く手前の道で。タワーの前で、佇んでいる男の子がいた。
「…どうも」
どうやら用が済んだみたい。こっちに向かって、歩いてきた。すたすた歩いていたから、素通りするのかと思ったけど、3歩進んだ辺りで突然立ち止まった。
「もしかして…、ホウエン地方のチャンピオン…?」
「え…?」
慌ててダイゴさんの方を見る。すると彼は…お得意のスマイルを返してみせた。
「…やあ、ボクはダイゴ。ホウエンリーグのチャンピオンだ。よく…知っているね?」
ああ…もちろん、と即答する男の子。オレもカロスリーグのチャンピオンのカルネさんを倒したからね…と今度は私の方を見てくる。
「へえ…、同じ立場、って感じかな」
そう答えるとふうん、とあんまり興味なさそう。
「これも何かの縁…ですかね。オレはカルム。もしまた会う事があれば、お手合わせ願います」
颯爽といなくなる彼を見届けて、さあ、撮ろうかとダイゴさん。さっきの事を聞くと、ああいう子は多いよね、とあまり気にしていないらしい。
「そう言えば向こうで、メェークルというポケモンに乗れるみたいだね」
…え。またですか?と聞き返すと、きみはつれない子だね…って残念そう。
「ダイゴさんが乗りたかったら、行きますけど…」
「…いいのかい!?かなこちゃん!」
…もう。キラキラ目を輝かせて…ずるいよ。こっちへ来てからというものの…、ダイゴさんにチャンピオンの影はなく、ただ単にお金持ちで、世間知らずで、でも子供みたいにはしゃぎ回ってて…きっと声に出さなくても、私は自分の気持ちに気づいてしまってる。ダイゴさんが好き__と。