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「…かなこちゃん?風呂、入れる…?」

しばらくそうしていたけど。起きる気配のない彼女を起こそうと、そっとベッドに近づく。ふと服の隙間に目がいった。小ぶりではあるけど…確実に寄っている胸には、縦に線が入っている。

「…っ」

くっと拳を握った。もちろん…今まで異性として意識していなかったワケじゃあなくて、むしろその逆だったけど…。『女の子』ではなく『オンナ』の部分を目の当たりにしてしまうと…、男は正気ではいられなくなる。ボクには…そんな感情…なかったはずなのにな___苦しくて顔をしかめた。…手を出したい。なんて嫌な感情。雄そのものの本能を、剥き出しにしてくれる目の前で眠る彼女に、少しだけ苛立ちを覚えた。

「少しだけ…出てくるよ」

それだけ言い残して、ロビーでタバコを吸った。ふう、と息を吐くと段々芽生えた気持ちは落ち着いてきた。まさかボクがこんな理由で、タバコを吸うとはね…。またしても自嘲気味に笑ってみせる。酒もタバコも、普段はそんなものに頼らなくても、石を探し回っているだけで十分楽しいし、勝負は勝負で快楽の1つ。…なのに何で。こんなにも…、苦しくなってしまうんだろうか。ようやく普段通りに落ち着いたボクが部屋に戻ったのは、とうに0時を回った頃だった。

「頭痛い…すいません…」

翌日。起きてもなお頭が痛いのは治らなくて、多めに水をもらう。出発を少し遅めにして、エアームドで行こう、と提案してくれるダイゴさん。

ああ…今日は天使に見える…と呑気すぎる彼女を横目に、深く溜息をついた。昨日から…どうかしているよボクは…。なかったはずの気持ちが芽生えてしまった以上…、何とかして誤魔化す日々を送らなければならない。…それがどんなに辛いことか。

「少し…外の空気を吸ってきなよ」

その言葉に甘えて、ホテルの外へ出てみる。すぐ横の広場の柵に腰かけ、そっと息を吸った。少しして気持ちが落ち着いて、ダイゴさんの待つロビーへ向かおうとした…途中。

「あれ…?」

灰皿に、昨日はなかったはずの、大量のタバコの吸い殻がある事に気づいた。テーブル周辺には、少しだけ灰が散らばっている。ここには昨日、誰も泊まっていないみたい…とダイゴさんが言ってたのを踏まえると。ダイゴさん…、タバコ、吸う人だったの…?何だかイメージが湧かなくて、不思議な気持ちになったけど、その後すぐ本人が来てしまって、さあ行こうというもんだから、そんな事はすっかり忘れてた。今日は寄りかかれる方がいいよね、と後ろに乗せられたおかげでダイゴさんが支えになって、だいぶ楽だった。着いたのは__


bkm
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