「今すぐ消して。…ね?」
「嫌ですよー!永久保存版!」
「…お願いだから、消して」
「何度言われても消しませんよー!」
…かなこちゃん、笑いすぎ!少しだけムッとしたからボクは、次の作戦に出た。
「…ふうん。消してくれないなんてかなこちゃん、きみはひどい子だね。そんな子には…」
「え…っ!?」
咄嗟に振り返ると…あまりにも近くにダイゴさんの顔があって……。思わず、目を逸らしちゃったんだ…。
「…フフフ、驚いた?」
ダイゴさんの方を見ると。まるで悪戯が成功した子供のように嬉しそうで。…もう!軽く腕を叩けば大袈裟に痛いなあ、といじけてみせる。
「とにかく。悪戯は良くないよ、かなこちゃん」
そう言うダイゴさんは怒っているワケではなさそうだけど、今回の私の行動には感心していない様子。ちょっぴり残念だったけどね…気まずくなりたくなくて、後でこっそり消しておいた。
奥の方まで来てしまったけど、隣町へ行くのには日が暮れそう、という理由で(本当かどうかはわからないけど)穴抜けのヒモを使って、セキタイタウン側の入口に戻ってきた。向こうにはホテルがないんだ…と言うダイゴさんはきっと、それが目的なんだと思った。
「…これ。かなこちゃんに似合うと思って」
ホテルのロビーで、ダイゴさんから手渡された紙袋。開けてもいいですか?と確認すると、もちろん、って笑顔で答えてくれる。あ…可愛い。
「…ありがとうございます!!早速、かぶっちゃお!」
途端にテンションがあがる。それをまたいつもの笑顔で見守るダイゴさん。その笑顔…ずるいですとはやはり言えず、ただただ笑っていた。
「…っ。うう…ごめんなさい…」
夕食に出された食前酒を、水と勘違いしてイッキ飲みしちゃった。途端に酔いが回って…ついには、一人で歩くのもままならない。
「フフフ…きっと昼間の罰だね」
こんな状況でもなお楽しそうに笑うダイゴさんは、最早悪魔だ。幻覚なのか何なのか…頭にツノが生えているようにも見える。何とか部屋にたどり着くなり、ベッドにバタン、と倒れ込む。そして数秒もしないうちに、眠りに落ちてたみたい…。
「…全く」
飲み方を間違えたね…耳元でそう囁いても、起きる気配はない。とりあえず先に風呂に入って、少し離れた場所からかなこちゃんの様子を見守る。