「…」
「…すまない、こんなところに連れてきて…」
昨日。あんな事があったから。ダイゴさんの用事につき合いたい、と私から言った。今日は珍しい石じゃなくて…跡地を見に行くんだ、という彼に着いてきたんだ__けど。
「…ここはね」
フレア団って集団が…この街、いや…カロス地方を、めちゃくちゃにね…。少しだけ辛そうにそう言うダイゴさん。ボクが直接関わったワケじゃないけど…とつけ加える。自分の住んでいる世界でも、生命を揺るがす危機が起きてしまったけど、ここはまた、それとは違う……
「…っ」
思わず隣にいる彼の服の裾を掴んだ。それがどういう意味だかわかったのか…、ダイゴさんは優しく、私の手を握ってくれた。
「…世界って、広い…んですね」
「うん…そうだね…」
妙にしんみりしてしまう気持ちを払拭するために、少し歩こうか、とダイゴさん。隣町へ行き、お茶を飲むことにした。
「…でもその前にね、寄りたいところがあって」
どうせ通り道なんだけどね…というダイゴさんはまたもや意味深な笑顔を見せた。でも暗い気持ちになってしまってる今、その穏やかな笑みがどこか…安心させられる、そう思った。
「いいですよ、のんびり行きましょ?」
繋いだ手はそのままに…、映し身の洞窟に入っていった。
「わあ…!!」
周りは見事に鏡張り。何だか照れくさいけど、ダイゴさんの表情を盗み見るのには持ってこいだよね、と悪巧みを考える。もちろん…、何笑っているのって指摘されちゃったけど。
「…ダイゴさん、よく私の事見てますよね」
ちょっとふてくされ気味に言うと、なぜか一瞬固まってしまうダイゴさん。でもすぐにいつものように戻ると、だって鏡張りだから…と答える。ちょっと疑問が残ったけど、何となくダイゴさんが楽しそうだから…とそのまま黙っていた。
「…うわ!綺麗なポケモン…!!」
サッと図鑑を開けばメレシー、というらしい。すると待ってましたと言わんばかりにダイゴさんが前のめりになる。最後まで邪魔はしなかったけど…ふふっ。あまりにも珍しい物を見た気がして、私は途中からずっと、その様子を録画していた。
「…ちょっと、かなこちゃん!!何やっているの!」
「ふふっ、ダイゴさん、あまりにも真剣だから、つい…!!」
思わず大声を上げて笑ってしまう。ここは洞窟、当たり前のように辺りに響き渡る…。