「…これは、明日渡そうかな」
幽霊を見た__彼女は、そう言っていた。もちろん年頃の女の子なら、怖がって当然だとも思う…けど。珍しく笑いが止まらない。まるでおもちゃを見つけた子供のように。
「…ダイゴさん」
「…ん?」
いつの間に出てきたのだろう。出てくるなり早く出てきてくださいね、と言われる。よっぽど一人でいるのが怖いらしい。
ふふ、と笑って風呂場に消えてゆくダイゴさんを見送ると…たちまち恐怖で震え上がる。…早く出てきて!!!!ちょっと物音がしただけでピクッとなる身体。程なくしてダイゴさんが戻ってきた。じゃあ…寝ようか、と電気を消して布団に入ろうとした彼に私は。
「…っ、あの…!!」
きゅっと腕を掴む。どうしたの?と優しく問われると。
「そっちの布団で…寝て、いいですか…?」
…っ!!ダイゴさんはハッと一瞬驚くと、たちまち笑顔に変わる。
「…よっぽど怖いんだね。フフフ…おいで、かなこちゃん」
サッと布団の中に入ると、ほら、という感じに布団を開けて手招きするダイゴさん。さすがにそこまでやられると…自分で言い出したくせに、何だか恥ずかしくて。
「…っ、仕方ないな」
そう呟くと、目にも止まらぬ早さで起き上がり、私を横抱きして布団の中に招き入れた。
「あ…」
「…緊張してる?」
向かい合うようにしてぎゅっと抱きしめられた。その距離にドキドキが止まらない。ダイゴさんに…心臓の音が…聞こえちゃいそう……。
「…安心して?襲ったりなんかしないよ」
「そんな事…」
顔を上げられない。ぎゅっとダイゴさんの胸に寄りかかると…、やっぱり男の人なんだなって思う。私なんか…簡単に包み込まれちゃう…。
「…ゆっくりおやすみ、かなこ…」
「ん…」
呼び捨てされた気がした…気の…せいかな。ダイゴさんの声がとても優しくて……、いつしか怖かった事も忘れ、眠りに就いていた。
「…ふう」
こんな状況で、ボクが眠れるとでも…?いくら自分で招き入れたとはいっても…ボクも立派な男、だからね。自嘲気味に笑って、しばらく腕の重みを感じていた。