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「……寝ちまいましたか」

ああ、眠い。この音楽が心地よいのもあるけど、それに加えて最近は取材も多いし、気持ちが休まる暇がない。チャンピオンってこんなにも大変だったんだ…前回は初めてだったこともあって、みんな遠慮してたの?それともやっぱり、ダンデさんが裏でコントロールしてくれてたのかな…。

「!?」

ふわっと身体が浮く感覚がした。微かに香るのは、キツすぎなくて誰にでも受け入れられそうな、爽やかな香水の匂い。一体誰…?確認したいのに、瞼は重いまま。また一瞬闇に落ちて、ドサッと降ろされるような感覚で再び、現実世界に戻ってきた。

「パンツ見えてんぞ」
「おまえね。そういうこと言うんじゃねえです」

え…なに……?誰かが何かを言っているのに、眠くて頭が働かない。モヤモヤした気持ちを抱えながら次に目が覚めたのは、だいぶ外が暗くなってからだった。

「………わっ!もうこんな時間!」

バッと飛び起きると、そこにいたのはキバナさんだった。あ、もしかして、ここまで運んでくれたの…?ぺこりと頭を下げると、オレさまじゃないぜー?っていつものノリだ。え、じゃあなんでここにいるの。

「かわいかったぜ、オマエの寝顔」
「……うぇ、また、そういうこと言う…」

もう、彼女いるくせに気を持たせるようなこと言わないで。軽く睨むとかわいい顔が台無し、なんて言うから頬を膨らませて対抗した。

「もう遅いからな。家まで送ってくぜ」
「い、いいですよ!子供じゃないし…」
「子供じゃなくても女だろ?オマエは。男ってのはなあ、女の子にいいとこ見せたいの。だから、オレさまに送らせろよな」

黙って頷いた。ダンデさんもキバナさんも、それからネズさんも。あたしのことをどう思ってるのかなんて本当のところはわからない。けど、手を差しのべてくれる大人の行為を、無下にしたくはないから。ホップが待っているというブラッシータウンまで、並んで歩いた。

「……おっと、気をつけろよ?」
「ごめんなさい…」

駅は帰る人で混雑していた。波に流されそうになるあたしの腕をグッと引っ張る力は強くて、やっぱり男の人だなって実感させられる。でも、オマエは小さいなあ、その発言だけはスルーできないよ。あたしが小さいんじゃなくて、あなたが大きすぎるの!

「よう、ホップ。元気してるかー?」
「ん?こないだも会ったよな?」

多少のトラブルはあったけど無事に着いたから許してあげよう。それより前から思ってたけど、このふたりのやり取りってなんかおかしい…。ずれてるとかそういうのじゃなくて何となく、自然に聞こえないのはどうしてなんだろう。


bkm
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