「今日も負けませんよ、キバナさん!」
「オレさまこそな!いくらプライベートとはいえ、オマエに負けをつけてやる!」
ナックルスタジアムで密かに行われているプライベートバトル。知ってるのはあたしとキバナさん…そして、ジムに所属する面々だけ。ジムチャレンジのスタートが近づくにつれて、周りも騒ぎ出すから。今の時期、こっそり行うリーダーたちが多い。
「エースバーン、かえんボール!」
あたしのパートナーはエースバーン。ヒバニーの頃からずっと一緒で、最近は何も言わなくても互いの思ってることがわかる気がしてる。対するキバナさんのパートナーはジュラルドン。ドラゴンとはがね、ふたつのタイプを併せ持つポケモンで、キョダイマックスができるのも強み。見た目が変わるだけじゃなくて、専用技があるってだけで特別感がある。
「んー、あと一歩なんだがな」
「へへ、ピンチの時でも負けませんよ」
「言ってくれるな、かなこ」
キバナさんの笑顔はいつも眩しい。試合に勝った時はもちろんだけど負けても自撮りは欠かさない…そんなポリシーも魅力なのかもって、最近は思う。あれ?気づいたらあたし、キバナさんのことばっかり考えてる…でもそれってやっぱり、ダンデさんのライバルだからじゃないかな。強いトレーナーとの勝負は、何度やっても飽きることはないから。
「オマエは、どんどん力をつけてくるよな」
「そう言ってもらえて嬉しいです」
「この後ダンデがここへ来るんだが、オマエは観客席で観るか?特別席用意するぜ?」
即答した。たまには、誰もいないスタジアムで、いつもあたしたちを煽る彼らと同じ場所から、眼下に広がる景色を観てみたい。あたしの返答にニコリと笑いかけると、客席へと案内された。