「わぁ……!」
マリィに呼ばれてあたしは今、ネズさんのライブに来ている。トラブルだろうから呼ばないで、なんて言われたけど、トーナメントではいつもテンション高くて。普段の性格とのギャップがすごすぎて、なんか目が離せない人だ。
「よお、かなこ」
「ふえっ!?キバナさん!?」
「しっ。お忍びで来てるから、内密にな」
うわ、唇に人差し指を当てながら、ウインクしてる…それが様になりすぎて、この人はジムリーダーである前にモデルかなにかなのかな?なんて思ったりもした。
「さ、さすがおしゃれですね…」
「そう見えるか?普段はユニフォームしか着ねえからな、新鮮だろ」
今度は無邪気な顔。そう言えば、初めて対戦した時、挑発的な顔したり、子供みたいな顔したり。くるくる表情が変わって素敵な人だな…なんて思ったのを覚えてる。
「オマエ、いつも来てるのか?」
「マリィが、アニキのライブに来てって誘ってくれて…」
バトル以外でこんな風に話すの、初めてだ。キバナさんが言うように新鮮だからかな?ちょっと大人になった気持ちがして、何か嬉しい。
「どうしたんだ?頬緩ませて」
「へ?緩んでました?ネズさんのライブが楽しみすぎて、つい」
咄嗟に誤魔化しちゃった。キバナさんとお話するのが嬉しい、なんて素直に言ったら子供っぽいし。ソニアの言う恋愛もそうだけど、最近はチャンピオンである以上、子供っぽい態度はできるだけやめようと思うようになった。みんなの憧れの的なんだから…、ビートくんに言われたように、イメージダウンしないようにしなきゃ。