「大丈夫ですか?ネズさん」
「当たり前でしょう、これくらいで酔わねえです」
そういう割に足元ふらふらしていると思うのはあたしだけ?キバナさんは特注品を取りに行くとかで、ダンデさんはソニアをホテルに泊めると言ってたけど。もしかしてそのまま、ふたりで……。
「それよりかなこ、おまえをこのままひとりで帰すわけにはいかないですから。ポケモンセンターに予約を入れてください」
「へ?あ、そうですね…」
まさかふたりから人数が増えるなんて思ってもみないから、普通に家に戻るつもりでいたけど。時折しゃがみこむような仕草を見せるネズさんを見てたら、この人こそ帰しちゃいけない気がして。ポケモンセンターへと来たんだけど。
「二人で、泊まれますね?」
「はい、偶然大きめの部屋が残ってましたので!」
うえ?なんでネズさんも泊まる?それに、ベッドがひとつなのに二人部屋?旅先でシングルルームしか借りてこなかったあたしには、未知の世界……。
「おまえはベッドを使いなさい」
「へ?ネズさんは?」
「おれは男です、床でも問題ありませんよ」
シャワーを浴び終わって部屋に戻るなりそう言われて驚く。まさか、男性にしては細めのネズさんを床に寝かせるなんて…絶対にあたしの方が逞しいよ、ワイルドエリアのテントで寝れるくらいだから。
「……早くベッドで寝てくださいよ」
「しつこいですね、おまえが使えと言ってるでしょう」
「じゃあ…ベッド大きいし!半分こで!」
もう嫌だ。この人、意外に頑固。確かに緊張はするけど…そこまで頑なに拒否する必要ないと思わない?あたし、寝相はいい方だし。
「同じベッドに入ったらかなこ…、おれはおまえを襲いますよ?それでも、一緒に寝ますか?」
「!!!」
譲る気のないあたしを黙らせるため、ネズさんはいきなりこんな事を言ってきた。そんな言い方されたら…はい、そうですかなんて頷けるわけなくなっちゃう。大人ってやっぱりずるい。
「初めからそうしやがれですよ」
「もう、口悪いなぁ」
ネズさんはよくても、あたしも頑固だから。無理やりソファに寝るように促した。というか、寝るまで監視するような素振りを見せたから…、さすがに堪えたのかもだけど。
「おまえ、ほんと大概です」
「ネズさんこそ」
あれ?あたしたちいいコンビじゃない?マリィに状況を伝えたら、アニキに襲われないようにって返ってきて。ちょっとだけ、眠れない時間を過ごした。