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「美味しいーっ!」
「おまえはほんとに美味しそうに食べますね」

あたしは今!なんと、ネズさんのおごりでステーキハウスおいしんボブに来ている…!本当、自慢したくなるくらい贅沢な時間だ。ホップとふたりでソニアに奢ってもらったのが懐かしい。冒険したてでもなかったから、それなりに賞金は持っていたと思うけど。大人だから奢るよ、って気前がよかった事を今でも覚えてる。

「そりゃあ!だって、バトルしてる時と食べてる時があたしの幸せなんですよ!」
「おまえは色気より食い気ですね」
「むう。あたしにだって色気くらいあります!」

普通の食事ならつき合ってくれる、ネズさんはそう言ってたけど、今のこの呼び出しが何なのかはよくわからない。本人いわくライブに来てくれたお礼、らしいけど。とゆうか、いつからおまえ呼び?全然いいけど。キバナさんなんか初めっからそうだったし。

「どうでしょうね」
「ひどい!ネズさんひどい!」

そんなやり取りをしていた時。前から現れたふたりを見て、ぽかんとしてしまった。それを不思議に思ったネズさんが視線の先をたどるのが、視界の端っこに見えた。

「あれー?もしかしてかなことネズくん、デート?」
「違いますよ。誰がかなことデートなんてしてやりますか」
「またそんな事言う…」

そう、あたしが見たのは。ほろ酔いでふらふらしながら女の魅力を振り撒いているソニアに、腕を貸しているダンデさん。満更でもなさそうでちょっとだけ、胸が痛む。

「かなこ……?」

様子がおかしいからなのか、ネズさんがあたしの顔を覗き込んできた。でも、酔っ払ってそれどころじゃないソニアと、全く空気の読めないダンデさんじゃ、こうなるのは目に見えていた。

「せっかく会ったんだからな!みんなで卓を囲もうぜ!」

はぁ…みんなに見えないように溜息をついて、残りかけのステーキを頬張った。

「ねえねえ、ダンデくんってさぁ」
「何だ?ソニア」
「どんな女の子がタイプなのぉ〜?」

程なくして。ほんとに酔ってるんだろうな…ソニアが急にそんな事を聞き始めた。そしてなぜかふらりと遊びに来たキバナさんも合流して、わいわいと騒がしくなる。

「……そうだな、オレはアニキだから、どうしても世話を焼く方に回るからな…。たまには、叱られるのもいいかもしれない…」
「ふうん。ダンデくん、将来は尻に敷かれたりして!」
「はは、それもいいかもな。普段はしっかりしてるが、ふとした瞬間にオレが守ってやらなきゃと思えるのも……」
「これ、ガチなヤツだな」

あたしの恋心を知ってか知らぬか、耳元でそうキバナさんが囁く。女慣れしてるけど、いつもなんだかんだで楽しませてくれるから、惚れちゃうかも?なんて思ったのは撤回かな。

「ダンデさんなら選び放題だよね…」
「ふうん?かなこ。そういう事か」
「なっ、なに」
「オレさまの方がいい男だと思うぜ?」

軽く睨んだらおどけられた。キバナさんって本当に掴みどころがない。程なくして、あたしたちのやり取りを見ていたネズさんはなぜかお酒をいっき飲みして…。


bkm
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