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「かなこ!ソニアを連れ戻してくれてサンキューだぞ」
「へ?どういう事?」

研究所に着くなりホップが出迎えてくれて、いきなりそんな事を言われて頭に疑問符が浮かんだ。ソニアはソニアで特に気にしてる様子はなかったけど、

「ごめん、ホップ。ダンデくんにどうしても!って頼まれちゃったんだよ」
「アニキか…なら仕方ないぞ!それよりかなこ、こないだの勝負、引き分けだったんだな」
「ああ、うん。最初は引き分けにするつもりじゃなかったの、でもダンデさんが、余興だからって面白い提案をしてくれたから…」

あたしたちが話す傍らで、ソニアは複雑そうな顔をしてた事は、しばらく頭の片隅に残っていた。それがあたしに対する嫉妬なのかもしれないと気づくのは、すぐ後だった。

「よか……!」
「ソニアも上手だったけど、ルリナさん、さすがです…!」

メイクをしたいというマリィとふたりで、ルリナさんの元を訪ねていた。ネズさんにやってもらえばいいのに、そう言ったら、

「アニキに任せるとキツい印象になるけん。ただでさえ怖がられてるのに…あかんよ」

マリィが日に日に女の子らしくなってるのは、あたしと同じで恋をしてるからなのかもしれない。ジムリーダーだし、それなりに人気があるとも聞いた。でも、ネズさんみたいにアニキでもないのに…、マリィには誰ともつき合ってほしくないような気がしてしまう。

「するなら、年相応のメイクがおすすめね…やりすぎはかえって印象悪くするから。じゃあ次は、自分でもできるやり方、教えます!」
「「お願いします!」」

それから。ルリナさんの手ほどきを受けてふたりとも、自分でメイクができるようになって数日。

「どうした?かなこくん。全然集中できてないぜ」
「……あ、ごめんなさい」

まずい…今はそうだ、バトルタワーでオーナーと勝負中だった。ダンデさんの顔を見ると嬉しいのについ…、こないだのソニアの事を考えてしまうから。何も言わないけどソニアは絶対にダンデさんの事が好きだし…それに。ふたり、いろいろあったって聞いたけど今は、すごく仲良さそうに見える。本当はもう、つき合ってるのかな……

「少し休憩しようぜ!ホットミルクでも飲んで、な?」
「……はい、ありがとうございます」

エースバーンも心配してくれてる。それもそうだ…、今までこんな事、一度もなかったから…。このコたちに不安を悟られるようじゃあたしも、トレーナーとしてまだまだだな…。

「何か不安な事があれば、遠慮なく言ってくれ。最も…オレじゃ力になれない事も多いけどな」
「そんな…!ダンデさんにはいつも、バトルの事で教えてもらってばっかりですから!」
「はは、それはオレが、バトル以外の事は答えられないと言っているのか?」
「えっ?違いますよ…!そんな、滅相もない…!」
「気にしてないぜ?本当の事だからな。昔よく、ソニアに言われたぜ。ダンデくんは女心なんかまるでわかってない、ってな」
「………」

ほら、また…胸が途端に苦しくなるのは、好きだから。友達とギクシャクしてもそうなるのかもしれないけど…、どうでもいい人とだったら、こんな感情になってないよ、たぶん。

「かなこ……?」
「へ……?」

真剣な瞳。本当に本当に、心配してくれてる…だから、無理やりに笑顔を作って、その場を切り抜けた。

「無理はよくないぜ、かなこくん。ひとりで背負い込むなよ、いつだってオレはキミの味方だからな」
「……ありがとう、ございます…」

ずるい。こんな状況でそんな言葉かけられたら…、いい方に捉えちゃう。頭をポンポンと撫でる手は、それはそれは本当に心地よくて…。幸せな気持ちと、届かない想いの間で揺れ動く心をそっと、癒してくれるようだった。


bkm
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