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『かなこと勝負がしたい、つき合えよ』

キバナさんはいつだって突然だ。宝物庫に呼び出されて、ふたりきりのプライベートバトル。いつものように軽ーくひねるとなぜか嬉しそうに、自撮りを始めた。

「本当に好きですね、自撮り」
「オマエもやればわかるぜ?かなこ」
「わかりますかねー」
「んー、ノリ悪い奴。早くオマエを負かして、泣かせてみたいよな」
「……なんかそれ、変な意味に聞こえます」

キバナさんって自由気ままに生きてるように見えてるけど、実はちゃんと努力してる。公の場で口説いてくるけどあれだってただの作戦で、終わったら本物のアニキのごとく、あたしの事を可愛がってくれるし。

「かなこも言うようになったじゃねえか!少しは一人前の女に近づいたかぁ?」
「そりゃあ、確実に近づいてますよ!」
「だよな。聞いて悪かった。…ほら、撮るぜ、一緒に」
「……えっ!」

パシャリとシャッターが落ちる瞬間。こめかみに生暖かさを感じて、驚いてのけ反ってしまった。恥ずかしくて目を合わせられないあたしをウブだな、キバナさんはそう言ってからかう。大人の余裕とかいうやつ?

「いいですね、キバナさんは」
「何だよ、かなこ。オレさまに惚れた?」
「違います。いつでも余裕、って感じで」
「……じゃねえけどな」
「へ?なに?」

彼の呟きはちょうど、外に出た時に吹いてきた風によってかき消された。それから当てもなくナックルシティをふらふらしていると、前からダンデさん…に、ソニアがやってくる。

「おう、ダンデ!」
「キバナはかなこくんとデートか?」

デート。今まで散々どうでもいいと思ってきた単語だったのに、ダンデさんに言われると何だか、破壊力抜群だ。後ろにひっくり返りそう。

「まあな。てかオマエも、ソニアとデートだろ?」
「あ、いや、オレは……」
「なになに?ダンデく…って、キバナくんにかなこじゃん!どうしたの?こんなところで」

キバナさんの口がデートって言う前にバトルしてたと伝えた。だって否定しとかないと、本当にキバナさんとデートしてた事になっちゃうから。でも、誤解されたところで、ダンデさんがあたしみたいな子供を相手にするわけない…だから、ちょっとした強がりだけど。結局ふたりとはここで別れて、ソニアと研究所への帰り道。

「ダンデくんはさぁ」
「うん」
「昔っから方向音痴でさ、困るたんびにわたしに助けを求めてくるんだよね。こっちの身にもなってよ!って感じ」
「今日も…そうなの?」
「うん…なんかね、ナックルシティに新しくできたスタジオで今度、撮影があるとかでさ…。ひとりでたどり着けないと困るぜ!なんて言うから、下見につき合ってあげたんだ」

ソニアはダンデさんと同期だから、もう長いつき合いなんだよね。お互い、知り尽くしてるって感じなのかな。…ズキン。そんな音を立てて、胸がぎゅっと苦しくなった気がした。


bkm
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