「キミのチャンピオンタイム、見せてくれ!」
「望むところです……!」
割れんばかりの声援に包まれてあたしたちは今、チャンピオンマッチを行っている。久しぶりにあのユニフォームを身に纏ったダンデさんと勝負するから、胸の高鳴りは計り知れない。それは向こうも同じみたいで…、真っすぐで曇りなくて、でもどこか挑発的な笑顔を向けてきた。まさか…その顔にドキッとさせられました、なんて言えるはずもなく。
「リザードン、キョダイマックス!」
「エースバーン、ダイマックス!」
こういうのは余興も兼ねてるから。お互い、技選びは華麗だった。でも…ここまでは順調に進んでいたはずなのに、余裕がなくなったのかダンデさんはこう提案してきた。
「ほのおタイプ同士…それから、最愛のパートナー同士。正真正銘の真剣勝負にしようぜ!」
「……わかりました。その挑戦、受けて立ちます…!」
会場の空気が変わったのがわかった。それは、あたしがダンデさんの要求を飲んだから。ううん…それだけじゃない、ホップいわくあたしの真剣な表情が、トレーナー心をくすぐるんだとか。そんなつもりまるでないけど。
「ダイバーン!」
「キョダイゴクエン!」
姿を変えたリザードンに、巨大化したエースバーン。彼らの放つ炎は熱くて、熱すぎるくらい。周りの熱気と視線のせいでじんわりと手に汗をかく…、でも、こんな高揚感が味わえるのは彼…ダンデさんがめちゃくちゃ強いから。
「……わ!」
「おっと!」
「勢い、余っちゃいました」
「はは、それは元気な証拠だぜ」
ああ…あたし、ダンデさんのこの笑顔が好き、好きなんだ……。今、抱いているこの気持ち…これがたぶん恋、なんだ…。
__ワァァァァァ!!!
だってそうでしょ、これだけ多くの観客に囲まれているはずなのに…、まるでここにはふたりしかいないような、そんな感覚になるだなんて。尻もちをついたあたしに差し伸べられる手は、どこまでも優しくて、温かかった。
「かなこくん、今日のところは引き分けだな!」
「へへ、そうですね!」
勝負に引き分けなんていらない。チャンピオンになってからはずっとそう思ってきた。でも今、この瞬間だけは…、あなたとおあいこでいさせて__