10
「〜〜〜♪」

初めて来たのは確か、ジムチャレンジの時だったよね。きちんとしたライブを聞くのはこれが初めてだから、すごく楽しみ。相変わらずエール団が半数を占めてるけど、一般客も多かった。マリィいわくストリートだとお客さんが溢れて別のところで支障が出るのと、お金を取れる音楽やってるんだから貪欲に取りに行け、って事らしい。妹は強し、だね。

「どう?気に入った?」
「うん!楽しいね!」

今日のラインナップはかっこいい曲を中心に、しっとりとしたナンバーも。音楽なんて普段気にして聞いてないけど、TVとかつけたら流れてたりするし…今度、真剣に聞いてみようかな。

「……きみですか、かなこ」
「あっ!来たら、まずかったですか?」

ライブは大盛況だった。帰りにCDやグッズを買う列、サインをもらう列ができるくらいに。最後まで待ってたら、楽屋に案内された。

「普段人は入れねえんですがね」
「へ?じゃあ、特別?」
「そんないいものじゃないですよ。座りなさい、そこに」

ジムリーダーやってた頃とはまるで違って、業界人って雰囲気が出てなくもない。けど、アニキだからなのか…面倒だと言ったあたしの事は、気にかけてくれてた。

「チャンピオンとしての責任は果たしてるようですね」
「はい、それが仕事なので」
「おれはマリィにジムリーダーを譲ってから、気の向くままにライブをする日々です。きみも気が向いたら、聞きに来てください」
「いいんですか?だって、迷惑じゃ…」
「ああいう事での呼び出しは迷惑ですがね。普通の食事くらいなら、つき合いますよ」

それは…どういう意味、なんだろう。はい、って曖昧に返事をするのが果たして正解だったのか。それとも、デートに誘われてたって事なのか。恋愛経験値のないあたしには、さっぱりわからなかった。


bkm
prev next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -