「………はぁ」
全てが終わって。へたりと椅子に座り込んだ。そこへごきげんなルリナさんがお水を持ってきてくれた。
「かなこ、練習したんだ?上手だったよ!」
「ほんとですか…疲れましたよ…」
ドキドキして集中できないだけじゃない、ダンデさんの足を何回も踏みそうになっちゃうし、バランスを崩す度に身体は密着。抱きしめられてるみたいになっちゃって…、みんなの視線も感じたし、ほんと疲れた……。
「相手がダンデじゃねえ、全然ときめかないけど」
「へっ?そうなの?」
「うーん、なんて言えばいいんだろう。彼、職業柄女性のエスコートは慣れてるし。仕事の一環としか思ってくれなそう。わたしなら、ちょっと不器用な男の方が、グッとくるかも」
ルリナさんはキバナさん相手なのにケンカしてたみたいだし…もしかして、今視線の先にいる…。
「ルリナさんって、もしかしてヤローさんが好きなんですか?」
「……しっ!かなこ、声が大きいよ…!」
大きな目をぱちくりさせながら慌ててるルリナさん、すっごく乙女。こんな美人に産まれたら、言い方悪いけど選び放題だと思うのに…それとも、言い寄られすぎて、純粋な人がタイプになったとか?
「……絶対言わないでよね、ヤローに」
「えーっ!言っちゃえばいいのに!」
「あなたねえ…。かわいいから許すけど。でも、ほんとに言わないでよ?彼を倒した時に、自分から言うって決めてるんだから…」
綺麗で、かっこよくて、乙女で…当たり前だけど強いし。ルリナさんって、知れば知るほど素敵な人だ。あたしも、ただのチャンピオンじゃなくてちゃんと…、多くのトレーナーから憧れられる存在になりたい。今のまんまじゃ、この地位に甘えてるだけ。その日から、ワイルドエリアに行く時は、仲間を鍛える事もメニューに追加した。