「あら、かなこ。見違えるように綺麗だよ」
「メロンさん!お久しぶりです」
パーティーには、当たり前だけど顔馴染みの面々がたくさん集まっていた。壇上ではダンデさんがあたしの代わりに今日のスケジュールを伝えてくれている。とは言っても、ほとんど親睦会のようなもので、初年度みたいな歓迎会とかないんだけど。
「馬子にも衣装ですよ、かなこさん」
「む…ビートくんこそ」
上下ピンクを貴重にした女子カラーでまとめてるくせに、似合ってる。さすが、小柄とはいえスタイルのいい男の子は違う。それに、前髪をきちんとセットしているからか…、あたしよりもずっと大人びて見えるから。少しだけ腹立たしい。
「まあでも、ぼくのパートナーにしてあげられなくもないです」
「へ?パートナー?」
思い出した、前回のパーティーは…いきなり音楽が流れたと思ったら、大人組は慣れたように踊り始めたのは今でも忘れない。あのネズさんが?とか失礼な事を思ったりもしたな…懐かしい。一応チャンピオンとして恥ずかしくないよう、ママと練習らしきものをしてきたけど…、ビートくんの足を引っ張ったらどうしよう。
「安心してください。ぼくは女性に恥を欠かせるような事はしませんから」
そう、今回は内輪の集まりだけど、前回の時は一般客も大勢いて。その中のひとり…ジェントルマン風の男性は、ダンスが下手だったという理由で、パートナーに選んだ女性にこっぴどく言われてたね、確か。
「ニューチャンピオン。元チャンピオンのオレと踊ろうぜ!」
「へっ?あ、え?」
ビートくんからの誘いを受けようとしたその時。どこからどう入ってきたのかわからないけど、ダンデさんがあたしの手を取っている。ビートくんはといえば、その行動に呆気に取られてるのかそれとも、早く頷かなかったあたしに苛立っているのか。怪訝そうな目をしていた。
「待ってください、何でそんな話に?」
「キバナがオレに手本を見せろとうるさいからな…すまない。余興としてつき合ってくれないか」
ああ、そういう事。本番じゃないんだ、なんだ…って、そうじゃない。結局は人前で踊りを披露しなきゃならないんだ…できるかな?しかも相手がダンデさんだなんてますます足、引っ張れない。
「そんなに緊張しなくて平気だぜ、身内しか見てないからな」
「えっと…この場面だったら誰でも、緊張すると思います…」
なんならビートくんの方がよかったよ、それかキバナさん!ほんとは、来てないけどホップがいい…なんて考えてる間にフロアの中央に連れられて、注目の中心にいた。音楽が鳴り始めた途端にグッと距離が縮まって…、見た目からして何となく想像できたけど!逞しい腕に支えられて、ものすごく近くで見つめられて…その、ドキドキ、しちゃったんだ……。