06
「かなこくん!今日も来てくれたんだな!」
「もちろん!シュートシティで試合があったので!」

エキシビションマッチがあると、たいていあたしはここ、バトルタワーに立ち寄る。もちろん数多くのトレーナーやジムリーダーたちとの勝負も退屈しないけど…、ダンデさんとならポケモンについて永遠に語り合えそう、それくらいに話が合うからつい来ちゃう。

「あそこはちょっと、ミスチョイスでしたかね…」
「いや、そんな事はないぜ!だが、こっちの選択肢もあったかもな」

ニカッと笑うダンデさんは、まるで子供のように無邪気。だからいつもつられて笑顔になる。誰かがチャンピオンを辞めてバトルタワーのオーナーになってからいきいきしてると言ってたけど、そうなのかもしれない。…でも最近は、忙しそうだけど。

「もしかしてダンデさんって」
「?どうかしたか?」
「ここに泊まってるんですか?」
「……いや、この近くに家は借りてるぜ?だがな、夜になるとつい…」
「迷って、たどり着けないんですね、わかります」
「キミはそんな事はないだろう」
「あたしだって、ワイルドエリアでは絶賛迷子ですよ!みんなおんなじ景色なんで」
「あれはオレじゃなくても迷うよな」

他愛もない話だけど、ダンデさんと話してると、すっごく楽しい。今度次のジムチャレンジに向けてのパーティーがある事を聞いて、帰路についた。

「かなこ、今度のはちゃんとしたパーティーでしょ!おしゃれは必須だよ!」

朝からソニアが騒がしい。もうちょっと寝かせてよ、なんて思うけど今日はパーティーだから。チャンピオンとして恥ずかしくない格好しなきゃと考えをあらためるくらいには、自覚が出てきたんだと思う。

「かなこは主役だからな!」
「ホップ……」

あたしがチャンピオンになったばっかりに、彼…ホップの夢を奪ってしまったのかと辛い時期もあった。でもホップは、いつも笑ってくれていた。

「かなこやアニキとは違う道を進むけど……、これからもライバルでいてくれよな!」

今では互いの仕事のよき理解者って感じ。この先もずっと…、そうであればいい。

「でね、かなこに似合うと思って、いろいろ取り寄せたから!」
「へ?ソニア仕事早いね…」
「当たり前でしょ?博士はこれでも忙しいんだ!なんてね」

茶目っ気がすごい、あたしより年上なのに。昔、ジムチャレンジの時は大変だったみたいだけど、今はこうして新たな目標ができて、後輩ができて。ソニアの毎日は充実してそう…、周りからそう見えるんだから、実際充実しているんだと思う。

「ほらほら、こっちに来てよ!ホップ、男子禁制だから入ってくるなよ!」
「……い、言われなくても入らないんだぞ…!」

これでも年頃の女の子だ、さすがに男の子に着替えを見られるのは困る。着飾って美しく変身した姿は、出てるはずのところが出てない以外は、完璧。

「ちょっとだけ色を足そうかな。かなこらしさはなくしたくないもんね」
「ソニア、本当のお姉ちゃんみたい」
「そうだよ!姉だと思って、どんどん頼ってくれていいんだからね!はい、できた」
「綺麗…。あたしじゃ、ないみたい…」

メイクの力ってすごい。本当にちょっと足しただけなのに、華やか。これなら、大人たちと同じところにいても、多少は気後れしなくて済みそう。外で待っていたホップも照れながらも褒めてくれて、温かな気持ちになりながら、シュートシティ行きの電車に乗った。


bkm
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