05
「おつかれ、マリィ」
「かなこもね」

無事撮影を終えてあたしたちは、作ったチョコをラッピングして、おすそわけの準備を始めている。ボンッて爆発したような音が鳴った時はどうしようかと思ったけど、何とかかわいいハート型ができた。

「ねえマリィ」
「……何か、嫌な予感がするけん」
「そんな事ないよ!一緒にワイルドエリアでカレー作ろうよ!」
「ほら。あたし、そういうの苦手だし。それにかなこ、女の子なんだから、そんな危ない場所に一人で行ったらアカンよ」

昔は無口だったのに、そう言われると耳が痛い…。こっちに引っ越してきた頃は大変で、ずっとホップの後ろをくっついて歩いてた。けど、徐々に友達が増えて、大人とも対等に話せるようになって。自分自身では成長をものすごく感じる、だから、悪い要素なんてひとつもないのに。

「大丈夫!キテルグマに追いかけられても何とか生き延びたから…!」
「そっちじゃないって。心配やね…」

何かだんだんとマリィが姉ポジションになってない?それだけあたしは危険?てゆか、こういうのって女らしく、とか男らしく、じゃないと思う。女の子が泥んこになったっていいと思うけど。

「あたしは、アニキにあげてくるね。そうしないと、怒るから」
「ネズさんも過保護だよねぇ、なかなかマリィを誘わせてくれないもん」

ぷいっと頬を膨らますと、くすっと笑うマリィ。最近よく見られるようになった笑顔だけど、マリィは笑ってるほうが断然かわいいよ。女子のジムリーダーはマリィに任せてあたしは、手始めにビートくんのところに寄った。

「あれ?アポなしはまずかった?」
「いいえ。構わないですけど、こんな格好でしたから。お見苦しいところを」

ビートくんはポプラさんと家にいて、優雅にお茶を嗜んでいるところだった。お見苦しいといいつつもユニフォームじゃないだけで、ガラル男子らしくおしゃれなスーツに身を包んでいた。こう見るとまつげは長いし、たぶん美形。メイク…したらきっと、綺麗なんだろうなぁ。

「かなこさん」
「は、はひ!」
「あなた…まさかとは思いますが、ぼくで遊んでいますよね?絶対におかしな事を考えてましたよね?」

そして、あたしの考えてる事なんてまるでお見通しかのように笑う。性格悪いのは元々知ってたし、ホップを傷つけた事は今でも腹が立つ。でも、ビートくんはビートくんなりに変わろうとしてくれたわけで、その努力を否定してしまうとしたら、昔話を蒸し返す必要はないよね。

「それより、これ!ほら、お菓子のCMの」
「……ありがたく頂きます」

素直じゃないね、相変わらず。でも、そこがたぶん、ビートくんの魅力。そう思うとかわいく思えてきて、帰り道は緩む頬を抑えられなかった。


bkm
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