03
「〜♪」

いい音楽が流れる街、ラテラルタウン。たぶん古くからある曲なんだろうけど、妙に耳馴染みがいい。ふらふらっと掘り出し物市を見て、珍しいものが入荷していないか探しているところに。

「…かなこさん」
「オニオンくん!元気?今度、エキシビションマッチに招待するね!」
「……待ってます」

ガラル地方に住む人たちの大半はあたしより年上。だから自然と気を遣ってしまう。けど、オニオンくんは年も近いし、チャンピオンになった今でもお忍びでこうしてこの街に来た時は、決まって話し相手になってくれる。優しい男の子だから、彼のピンチには絶対に駆けつけるって決めてるんだ。

「最近はもう来ない?あの男の子たち」
「……うん、だから、かなこさんも気にしないで」
「そんなわけにいかないよ!オニオンくんが平和に過ごせないなら、その要因を取り除いてあげたいし」
「……あ、ありがとう」

こないだ、ビートくんがあの英雄の像を見に来た…オニオンくんはそう言った。結果的にガラルの歴史の解明に近づいたとはいえ、建造物を壊した事には変わりない。だから、謝罪のつもりだったのかな。

「……ビートさんと」
「うん?」
「今度、勝負するんです……」
「そうなんだ!見に行ってもいい?」
「……かなこさんに、特等席、用意するね」

リーグカード見たけど、仮面の下はすっごくかわいい顔をしてると思う。取ってほしいな…そう言える日が来たらいいなという願いも込めて、指切りをして別れた。

「そうなの?」
「うん!できたら、マリィにも出てほしいなぁ、なんて」
「いつからそんな色目使えるようになったんよ、かなこ」

久しぶりにマリィと会って今日は、あたしの家でおうちパーティー。お母さんは友人の来訪を喜んでくれて、お菓子やらおかずやらたくさん作ってくれた。ホップの事は大好きだけど、女の子の友達が来たのがすごく嬉しかったみたいで、はりきってる姿が目に浮かぶ。

「あたし、ジムリーダーの魅力をアピールするためなら、出るよ」
「へっ?そんなすんなり了承してくれるんだ?」
「あんたが言い出したんでしょ、もう。はい、これ。お礼に、今度のアニキのライブのチケット。元々、かなこに渡してって言われてたし」

あたしは来週、お菓子メーカーのCMの撮影が入っている。そこで、スポンサーから仲良さそうな絵を撮りたいという要望があったから。ホップ…でもいいけどお菓子には男の子?と思ったから迷わず、マリィを誘った。でも、すんなり了承してくれたし、なかなか手に入らないネズさんのライブのチケットももらえたし…勇気を出してよかったな。

「でもあたし、ネズさんにトラブルメーカーだと思われてるよ?大丈夫なの?」
「何それ。なんかやらかしたの?」
「違うよ、こないだのダイマックスの騒ぎ!それと、ローズ委員長の事も…かも?」
「大丈夫。何かあれば、あたしからアニキに話すけん。それに、チャンピオンのあんたを無下にできるほど、アニキは偉くないから」
「マリィ…」

最初は無表情で近づき難い雰囲気があった…でも今は、唯一まともに話せる女の子だと思ってる。ソニアとももちろん仲良いけどでも、年の差というものはそう簡単には埋められない。

「あ、かなこ」
「なに?マリィ」
「今度、ふたりでメイクしよ。以上」

相変わらずとっつきにくさはあるけど、マリィのクールさはあたしにはない魅力。だから…、ずっと友達でいたい。そんな風に思いながら眠りに就いた。


bkm
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