「今日こそはかなこを打ち負かさねえとな!オレさま何連敗めだ?今」
「それって、数えきれないくらいあたしに負けてるって事ですよね?」
「ったく。ジムチャレンジの頃は大人しくていい女だったのになぁ…ちょっと月日が経つとこれだもんな」
「えーっ、レディに対して失礼!」
ドラゴンストームなんて異名があって、背が高くてめちゃくちゃイケメン。そのくせ、ポケモンも強いんだから女子人気はガラルの中でダントツ。そんな誰にでもフレンドリーなキバナさんだけど、ダンデさんに対する執着心ったら怖いとしか言いようがない。でも最近は、
「なぁかなこ」
「何ですか?」
「オレさまの家に招待してやるよ、トクベツにな」
「そんな事言って、弱み握って次の勝負を有利に進めようって魂胆でしょ」
「バレたか」
あたしに勝てないからって、こっちにまで執着向けないでよ。でも、やっぱり強いトレーナーとの勝負は、楽しくてやめられないんだけど!
「あたしなんかより、綺麗なお姉さんとデートした方がいいんじゃないですか?ラプラス、なみのり!」
「綺麗なお姉さんが好みとは限らねえだろ!案外かなこ、オマエみたいなのがタイプだったりしてな?」
公の場で口説いて、あたしの気を逸らそうとしても無駄!ダンデさんとの初対決であれだけの注目を浴びたからもう…、怖いものなんて何もない!
「だったら、こっちからお断りです!」
一段とすごい熱気がスタジアムを包んだ。互いのダイマックスしたポケモンたちが暴れまわる。見事キバナさんから勝利を収めると、一瞬顔をしかめたけどやっぱり、自撮りは欠かさない。
「……来いよ、かなこ」
誘われて着いたのは、シュートシティでも人気のカフェ。普段は仕事以外で寄り道しないから、新鮮な感じ。それと…キバナさんの私服、腹立つくらいかっこいいから注目の的だ。
「好きなもの頼めよ!珍しくオレさまの奢りだ」
「そんな事言って。ないですけど!万が一あたしが負けたら倍に奢らせるつもりでしょ」
「何だよそれ。女は大人しく男に奢られとけっての」
挙げ句の果てに頭にポンッて手をやるから、周りの女子たちの視線が痛いんだけど。当の本人はまるで気にする様子もなく写真撮ってるから、あたしもスイーツに集中、集中。
「…あ、美味しい!」
「だろ?疲れた時にはここのスイーツが一番だからな!」
へえ、屈託のない笑顔、できるんだ…今日は何だかキバナさんの新たな一面を知れた気がして、充実した一日になった。