「先に入りなよ、かなこちゃん」
「…え?は、はい…」
何となく恥ずかしくなったけど、ここで入らないと、またからかわれる気がしたから。
「じゃあ…お言葉に甘えて」
そう伝えると満足そうに微笑んだけど、残念、と一言つけ加えた。
「何が残念なんですか?」
「…何でもないよ。とにかく、入っておいで?」
何となく…これ以上聞いても教えてくれない気がしたから、諦めて露天風呂に入った。交代でダイゴさんが入っていく。なかなか湯加減もよくて、ミネラルウォーターが火照った身体に染み渡る。幸せな気持ちを胸に、今日も終わりを告げた。
「…どこか、行きたいところはあるかい?」
__突然。ダイゴさんはそう言ってきた。今日は別行動なのかな?少し寂しくなったけど…悔しいから言わない。
「…ミアレシティ、もっと観光したいです!」
そう言う私にうん、と返事をするダイゴさん。実は見ておきたいものがあるんだ…と予想通り、別行動を示唆してきた。まあ…、ダイゴさんにもやる事がありますもんね、と妙に物わかり良さげに返事をすると、ありがとう、ってお得意の笑み。朝食を済ませ、例のようにエアームドでミアレシティまで送ってもらうと(今日も私が前)、それじゃあ後ほど、と消えていくダイゴさん。ふう…と溜息をついても仕方がなく、まずは中心部でもあるメディオプラザに行ってみる事にした。
「今日のホテルはミアレシティでボクが探しておくから。夕方にこのポケモンセンターの前で待ち合わせでいいかい?」
「はーい!」
元気にそう返事をすると颯爽と行ってしまうかなこちゃん(言っとくけど先に行ったのはボクじゃないよ)。そう言ったのはボクなんだけど…、隣に彼女がいないと寂しいと思ってしまう。この街で一番大きな、グランドホテル シュールリッシュに予約を入れると、フレア団の活動していた跡地に向かう。
「…ここは、問題ないみたいだな…」
クノエシティにあるボール工場を視察する。街の雰囲気に特に異常がない事を確認し帰るつもりでいると、ふと、一軒のお店が目にとまった。
「これは…」
もちろん…石ではない。自分の大好きな石でも、鋼ポケモンでもないのに…、自然と足はそのお店へと向かっていく。お金はないと彼女に伝えたけど、もちろんそんなのは真っ赤な嘘で。ただ…ボクが心配だから…側に置いておかないと。正直そこまで女性に強く惹かれたことはない。だからそんなきみに…、プレゼントしたいと、思ったんだ。