ヒロイン:hgss主人公
「はぁ〜」
今日も今日とて深い溜息を溢すツインテールの少女、かなこ。目標のひとつであるリーグ制覇を成し遂げた今、もうひとつの夢であるポケモンマスターを目指してひとり、ジョウトとカントーを行き来しているのだが。
「会いたいなぁ…」
思い浮かぶのは、この地方で最強のトレーナー、ワタル。ドラゴン一族の末裔とも言われる彼とは、怒りの湖で出会った。あの時はロケット団と戦う事で精一杯だったが、裏ではワタルが自分のために動いてくれていたからこそ、スムーズに解決に至ったのだと今でも思ってやまない。
「いざ、参る!」
更なるロケット団の悪事を暴き、ジョウト地方の全てのバッジを手に入れた。カントーへ赴き、そびえ立つポケモンリーグに足を踏み入れた先__そこにいたのは、アジトで共闘したワタル。彼の隣で戦った時、心のどこかでは強いトレーナーだと思っていたが、その後のあれこれでぼんやりと霞んでしまっていた。だが、チャンピオンとの勝負は、胸の奥に仕舞われていたその気持ちを呼び起こさせるような…、熱いものだった。
「じゃあ、かなこちゃん。またそのうち会おうな!」
竜の穴でシルバーとタッグを組み、ワタルとイブキのいとこコンビと戦った後。爽やかにそう告げられてからはまだ、一度も会っていない。
「また、それかよ。いい加減あんな男を思いながらニヤつくのはやめろ」
「ニヤついてなんかないよぉ!だってワタルさん、正義の味方!って感じでかっこいいでしょ?」
旅先で出会った大人は、自分よりもはるかはるか先にいるようで、胸が高鳴った。いつかはこんな風になりたい…そうとさえも思った。その想いは、その者より強くなった今でも、変わる事はない。
「待っていたよ、かなこちゃん」
「はい、ワタルさん!」
「その分だと…きみは更に、強くなったみたいだね。ならおれも、本気を出させてもらおうかな」
キリッと目の奥が光る。それは、初めて互いの仲間たちを競わせた時よりもずっとずっと、激しさを孕んでいる。目が合う度に全て見透かされているような…、そんな感情に揺さぶられながらも、ニッコリ微笑んで、最愛のパートナーと共に戦う。
「やっぱりあたし、ワタルさんと戦ってる時が一番楽しいです!」
「そうか!それは光栄だな!」
どんなピンチでも余裕の表情で乗り切るワタルは、最高にかっこいい大人だと思った。だから、そんな彼に今だけは…、胸を借りていたい。そして、何度でも会いたいし、戦いたい。恋心にも似た憧れの想いは今日も、激しく加速する___