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「あら……かなこさんに想いを伝えないだけでなく、カントー行きも伝えないのですか?」
「……うるさい。とにかく、オレはカントーで修行をする!他のことは……、それからだ」

造船所でビッケは、オレにそう言った。あいつとエーテルに行ったのはわずか1度きりだったはずだが……、リーリエに何か言われたのか?それともオレは、考えていることが顔に出やすいのか……?

(……オレはあいつにふさわしくない)

悪くない関係……実に便利な言葉だな。友達だとは言わない、仲間だとも言わない、好きだとも言わない、中途半端に誤魔化せる最高の言葉だ。一度もあいつに勝てなかったオレが、あいつに惚れて、あいつを守ってやろうだなんて馬鹿げてる。そのための修行でもあるからな、今回は。

(かなこ……)

カントーにはシルヴァディしか連れていかなかった。イチからやり直す覚悟で望んだからな。オーキド博士から3匹のうち1匹をもらい、カントーのジムバッジとやらを集め、ようやく頂に経つ頃には、アローラを出発してからだいぶ月日が経っていたのも懐かしい。

「きみはアローラ地方から来たんだな!実は前にも挑戦しに来てくれたトレーナーがいてな……」

チャンピオンはマントのドラゴン使いだった。さすがに一筋縄ではいかなかったが……、手応えのある勝負をすることができた。

「勝者、グラジオ!」
「シルヴァディ……!よくやったな……!」

何とかここまでたどり着いた。パートナーの成長と、カントーで出会った仲間。オレにとってのかけがえのない財産になった。

(船の手配でもするか……)

オレは、あいつに会いに行く。ずっと目標にしてきた、あいつの元へ。


bkm
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