「……坊っちゃま!」
「ビッケ……それに、あんたらも……」
かなこが初代アローラリーグのチャンピオンになった。そう聞いてリリィタウンで開かれていた祭りをこっそり見に行った後オレは、あいつらに負けた時に決めたように、カントー行きの船を手配しに造船所に来た。
「お見送りに参りました」
「オレひとりで大丈夫だ……」
ビッケと職員がわざわざ、エーテルから見送りに来てくれた。いつまでもオレを世間知らずの坊っちゃんだと思っているのか、ここからはひとりで大丈夫だと言っても帰るつもりはないようだ。
「それからこのこと、かなこには黙っておいてくれ」
オレの見送りが一際多かったからなのか、他の客は皆中に入ったまま出てくることはなかった。デッキに立って、手を振る方を見ていたが……、まさか母さんが直々に見送りに来るとは驚きだな……。
「フッ……行ってくる!」
その声は届くことはなかったが、代わりに手を振り返した。アローラからさほど遠くはなかったようで、夜中にはカントーに着いていた。
“オレたちは仲良しではない、でも、悪くない関係だ”
あの言葉には2つの意味があった。1つは、オレ以外のトレーナーに負けてほしくないという意味。アローラ最強のアイツと、唯一対等に戦えるトレーナーは、オレだけであってほしいからだ。2つめは……。