10
(かなこ……)

リーリエはあの晩、オレに聞いた。

「かなこさんのこと、どう、想ってらっしゃるのですか?」
「どう?それは、だな……」

オレが言う前に妹は全部わかっていたようだがな……。煮えきらない態度に怒ったんだろう、

「かなこさんきっと、ずっと待っているんですよ、兄さまが告白してくださることを。そんな健気なかなこさん……、わたしが男性だったら、黙って見ていられないです……!」
「……オレだって、あいつが好きだ。だが……、今でもまだ、オレはアイツに相応しく……「そういうことばかり言っていると、いなくなってしまいますよ……?知ってます?かなこさん……、ファンも増えていますし、目の色を変えたような方もいらっしゃるんです、わたし、心配で……」

抱き寄せた身体はまた、かなこと違っていた。だが、リーリエからは同時に、昔とは違う力強さも伝わってきた。

「……いずれは、伝える。他の男には、渡さない……」

よく思い返せば、博士は全部聞いていたんだろうな……考えるのはやめておこう。くしゃみをしたかなこの肩を抱けば、抱きしめた時とはまた違う感覚が胸に宿る気がした。

「グラ、ジオ……?」
「……戻るか。あいつらをそのままにしておけないからな」

オレは臆病なヤツなのかもしれないな。こんな状況で唇ひとつ奪えないなんてな。だが、そんな純粋な心は、あるひとりの男の行動によって打ち砕かれてしまうんだがな……。

「かなこー、どこ行ってたのー?って!グラジオ!?」
「えっ!?兄さま!?」

なになになに!?ふたりの反応、何か変じゃない!?慌ててグラジオの方を見たら同じこと思ってたみたい……ハウに鋭い目線を向けてて。

「おれは何もしてないよー!何で追いかけてくるのー!」
「オマエ……!妹に何かしたら許さない……!」
「この人怖いよー!それよりグラジオこそー、かなこに変なことしたらだめだよー!」
「……なぜオマエにそう言う権利がある……!」

こんな状況なのにリーリエは、追いかけあってるふたりを見て笑ってる。でも、何か楽しいかも!やっと、アローラの日常が、戻ってきた気がしたの。


bkm
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