*変化*
「フシギバナ、はなびらのまい!」
「カイリキー、ストーンエッジだ!」
さすが実力者。そう簡単には勝たせてくれない。彼らには劣るも自分ではそれなりに鍛えたつもりだ…、なのに終盤に進むにつれて勝敗は劣勢へと傾いていく。グッと唇を噛み締めると、血が滲む気がした。
「どうした、かなこ!これで終わりか?」
「そっちこそ!ラスト1匹でしょ?」
「だがな!オレとこいつの絆は強い!絶対に負けないぜ」
グリーンが最愛のパートナーに選んだのは、旅立つ時にもらったゼニガメ…いや、今はカメックスだが。ではなくピジョットだった。後に彼の切り札となるポケモンで…、ただのひこうタイプと侮っていると痛い目に遭う。
「ブースター、かえんほうしゃ!」
相討ち覚悟で放った技は、ほんのわずかのところで軌道が変わった。逆にグリーンのつばさでうつが刺さり、ブースターは今にも倒れてしまいそうだ。
「お願い、最後の力を貸して?ブースター」
その声に力なく立ち上がるも、キッとピジョットを睨みつけた。相手の体力もさほど残っていない…ならもう一度、ぶつかるしかない。
「かえんほうしゃ!」「つばさでうつ!」
想像以上に白熱した試合に、こっちまで倒れてしまいそうになる。ふらつく身体を支えながら、2匹の決着がつくのを待った。
「……負けたぜ、かなこ。よく、頑張ったな」
「……な、なによそれ…」
ブースターはギリギリでピジョットの攻撃を交わし、かえんほうしゃを放った。そう…、勝ったのだ。だが、すんなりジムバッジをくれたかと思えば、ぽんっと頭に手が置かれた。きっと彼にとって深い意味はないのだろうが…、胸がざわついた。
「惚れるなよ?オレさまに」
「なっ、ないない!そんなこと、あるわけ」
まだ恋を語れる年でもない。この胸のざわめきが恋というものなのかもわからない。ただひとつ言えるのは…、目の前の彼、グリーンがとても穏やかな表情を浮かべているということ。その事実が単に、嬉しかったのだ。