「やあ、レッドくん。どうかしたのかい?」
「ワタルさんって確か、ジョウト出身でしたよね?」
「ああ、それがどうした?」
「あの滝…、どうやって登るんですか」
風の噂で四天王の大将、ワタルがジョウトの出身だと聞いた。本人に疑問をぶつけてみると、あっさりこんな答えが返ってきた。
「そうか、レッドくんは知らないよな。実はな、たきのぼりという技を教えられるひでんマシンがあるのさ。ということは、ジョウトに行きたいのかい?」
「はい…正直今、自分が何をしたいのかわからなくて」
素直にそう告げると、共感してくれた。ワタルという四天王寺は小生意気な人だ、と心の中で思ったことを謝りたい。ちょうど実家に戻ろうと思っていた…彼からの誘いに大きく頷いた。
「へえー!早く、完成してほしいですね…!」
カントー地方では、レッドの初代チャンピオンが決まってからというもの、様々な変化が起きようとしていた。ジムリーダーたちはより美しいジムを、自然の多いまちづくりを、また人が入らずに手つかずだったところや暗い影を落としていたシオンタウンなど…、上げればキリがない。そのひとつであるヤマブキシティに、かなこはいた。
「リニア……」
ジョウト地方にあるコガネシティへと繋がるリニア。元々街の開発案に盛り込まれていたが、ロケット団によるシルフカンパニーの占拠などで慌ただしくなり、延期されていたのだという。地上では難しくとも、地下に潜ればどこにでも行けるとは、便利な世の中になったもんだ。
「いつか、行ってみたいな…」
トキワシティのジムが空くまでは、こうしてカントーの街を再び巡っている。今日訪れたのは、同じくロケット団の影響があったとされるタマムシシティ。ジムリーダーのエリカはのんきなもので、特に気にしている様子はなかったが。