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「………」

最強のトレーナーしか入れないとも噂されるハナダの洞窟。正式名称はなく、単にハナダシティにあるからこう名付けられたのだろうか。自分自身では四天王やライバルに勝ったくらいでは最強にはほど遠いと思っているから、薬などをたんまり買い込んで、準備万端で臨んだはずだった。

「うっ……」

中はまるで迷路だ。正直イワヤマトンネルもチャンピオンロードも大した事はなかっただけに…、油断していた。行けども行けども同じ道を通っている気がする。というのも、景色は似たり寄ったりで、当たり前だがトレーナーなど存在しない。いわゆる無人の洞窟を、ただ宛もなく進んでいるのだ…、途中で気が滅入ってきた。

「あなぬけのヒモ、忘れたんだよなぁ…」

それに肝心なアイテムを買い忘れていた。手持ちのポケモンたちはストックの薬を与えれば十分だったが、探険に必要な物を購入しないとはあの時…フレンドリィショップにいた自分を呪いたくなった。だがそんな事を言ったところでどうにもならない。仕方なく洞窟をさ迷っていたところ…、最奥に、一際強そうなオーラを纏ったポケモンが現れた。

「ミュウツー…」

どこかで聞いた事のある名前…思い出せ、頭をフル回転させてようやく浮かんだのは、グレンタウンにあった古びた屋敷。確かあの日記に書いてあった…ミュウツーは強すぎる、と。屋敷を破壊し、誰にも邪魔されないところ…つまり、この洞窟へと身を潜めたのか。一体何がどうしてこうなったかなど細かい事を追及するつもりは全くない。ただ、出会ったポケモンを、仲間にしたいだけだ。

「フリーザー、れいとうビーム!」

双子島で捕獲した伝説ポケモン、フリーザー。美しい身体から放たれる技は見事で、幾らでも見ていたくなるほど。しかし現実とはそう上手くいくものではない…、簡単に、はね除けられた。

「……くっ。プテラ、頼む!」

チャンピオンロードで手に入れたファイヤーも返り討ちにあった。たまたまだろうがひこうタイプが多く、物理というより特殊構成なのが仇となっている気もした。

「いわなだれ!」

相手の体力は減っているだろうが、目に見えて動きが悪くなったなんて事ははない。安易に挑みすぎたか、下手すれば全滅だ。いよいよ薬も底を尽きようとしている…さて、どうする。シルフカンパニーの社長がこっそりくれたマスターボールを、使うべきか。


bkm
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