06
「ライバルダンデを超えるため、アイツが選んだオマエに勝つ!」

あれはチャンピオンカッブでの出来事。順当に勝ち進んだのはオレと、ジムチャレンジャーの中では群を抜いて才能のあったかなこ。それはもう、白熱した試合が繰り広げられたわけだ。けどそうじゃねえ…、初めてオレのジムを訪れた時は緊張しかしてなかったくせに、だ。

「勢いそのままに、ダンデをぶっとばせ!」
「キバナさん!ありがとうございます…!」

不意を突かれた。強さ以外、正直全くもって眼中になかった女が。オレに勝ったのが嬉しかっただけなのかもしれねえ、けど…、まるで太陽みたいな笑顔を向けられて、トップジムリーダーがおかしいだろって笑われるかもしれないが、オレは一瞬で恋に落ちちまったんだ。__かなこの笑顔。別に特別かわいいとかじゃないだろうが…、あの時のオレには、もうこいつしか考えられなくなるくらいに、効果抜群だった。

「……好きなのね、かなこのこと」

あいつを自宅近くのブラッシータウン駅まで送り届けた後。珍しくルリナから飲みに誘われた。こいつは黙ってりゃ超がつくくらいの美人なんだがな…なんせ気が強すぎる。それに、モテるはずなのに男遊びは一切しないくらい真面目な女が…、一体何のつもりだ。

「は?何でそうなんの」
「わかるわ、あれだけ見てれば」
「かわいいだろ?あいつ。だから」

適当な返答をすれば睨んできやがる。せっかくの美人が台無しだと言ってやれば、オレに言われても嬉しくないだと。ったく、面倒な女。だが、知ってるぜ?オマエがヤローに惚れてること。

「……っ、そ、そんなんじゃないわよ!それより、本題なんだけど」
「どうせ面倒なこと押しつけるつもりだろ?」
「まだ何も言ってないじゃない。でも、意外ね。キバナは誰にも本気にならないと思ってたけど」

こいつ、オレを一体何だと思ってんだよ。普通に人間だって。それに、今までの女に本気じゃなかったとかねえよ?執着がなかっただけで。ん?もしかして同じか?

「ここはわたしが奢るわ。その代わり、引き受けてよね」
「あー、面倒くせえな。すっぽかしちまうかな」
「言うわよ、かなこに」

本当かわいくねえ女。帰り際にリョウタに電話して、スケジュールを変更してもらう。あいつの引っ越し祝い、1日遅くなっちまうな…すまない。詫びも兼ねて、少し高い酒を買いに行った。


bkm
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