「…え"。一緒に乗るんですか」
「…嫌?」
またしても満面の笑み。…絶対からかってるよね、というか私の反応見て楽しんでるよね…。つい不機嫌な顔をすると、あろう事か無理やりサイホーンの上に座らされた。
「わ…っ!!」
痛い…!と騒ぐ私にあ、と何か気づいたようでダイゴさんが一旦降ろしてくれる。
「…もう。いきなりびっくりするじゃないですか!」
「ごめんごめん。…ボクの後ろに座って?」
「…わかりました」
あれ?と思ったから曖昧に返事をすると、
「それとも前の方が良かったかい?」
とまたからかわれる。もう!と言ってみれば今度は真剣に、こう返ってくる。
「でもさかなこちゃん…今日はその…スカート、だよね」
「あ…」
よく考えたら…。何も気にせずに来てしまった自分を恥じていると。
「…責めているワケじゃないよ。ただ…ね、その…他の人に見せてしまうのは、と思って…」
ダイゴさんも照れてるのかもしれない…最後の方はよく聞こえなかったし。その気遣いが何だか嬉しくて、少しだけ服の裾を掴んだ。
「…よし、行こうか」
「…はい!」
サイホーンに揺られながら、時折岩に突進する衝撃でダイゴさんの背中にちょっと抱きついたりして、ようやく目当ての洞窟にたどり着いた。
「…ふう。お疲れ様、かなこちゃん」
先に降りて手を差しのべてくれるダイゴさん__まるで紳士。初々しくその手に自分の手を重ねると、ぐいっと引っ張られる。
「ボクは石と…化石を探すために奥まで行くけど、かなこちゃんはどうしたい?」
「私もちょっと散策してみたいので…、入口付近で待ち合わせませんか?」
私の提案がおかしかったのか…、ダイゴさんは一瞬、目を丸くしたけどうん…そうだねと頷いた。
「…でも、何かあったら、必ず大声を出してね?すぐに行くから」
「はい、でも、ダイゴさんには好きなように時間使ってほしいから…」
そう言うと、ありがとう、とたちまち笑顔になる。そう言えばツツジさんも…、ダイゴさんは石の事になると魅力的な表情をする、って言ってたっけ。この笑顔を見ちゃうと…困っても言えないな、そう思った。じゃあ!と去っていってしまったダイゴさんの帰りを待つ。いつもスーツのくせに、今日はしっかり探検家気取りの格好。…よっぽど楽しみにしてたのね、と若干溜息をつくも、微笑ましいと思っている自分が不思議。