真→跡
季節外れの雪が降ったりもしたが、今は正真正銘の秋。
美しく染まった紅葉
綺麗に透き通った川
月の光が俺たちを照す中、火照った体に吹く風は心地よかった。
今日は俺様のBirthdayだ。
夜中にこっそり部屋から脱け出した氷帝レギュラー陣が周りに気をつかい、静かにおめでとう、と言うも、なんだかんだで最終的には騒いでしまい、コーチに起こられた所から一日が始まった。
朝起きてから最初に会ったのは千石だった。部屋の前で偶然出会い、挨拶を交わす。その後に俺の目を見て、おめでとう、と笑った。
教えた記憶は無く、少し驚いた。隣にいた南や東方も違う意味で驚いた様で、すぐにおめでとう、と言った。
食堂に着くと幸村がおはよう、そしておめでとう、と言う。そこから俺が今日誕生日だと知らない連中にまで知れ渡り、昼には高校生の連中にまですれ違う度に祝いの言葉を貰った。
その光景が、氷帝にいる時と似ており、少し可笑しかった。
1日の練習が終わり、風呂に入る前にメールを確認すると、一通だけ、たったの二言で終わっているメールがあった。
『誕生日おめでとう。これからも油断せずに行こう。』
三日後に何を送ってやろうかと考えると疲れも吹き飛んだ気がした。
今年は合宿中ということで、いつもあるパーティは無くなった。いつもと違う、笑みをわざわざ張り付けなくても良い。
夕食は肉と急遽作ってもらったらしい誕生日ケーキ(庶民ver)。いきなり全員が歌い出したのは、確か去年も氷帝の奴等が歌っていた曲だ。どうやら庶民共通の御祝いソングらしい。
最後に今日何度も耳にした祝いの言葉、そして俺はロウソクの火を消した。
誕生日だからと言って、毎日欠かさずやる夜の自主練が無くなる理由にはならない。俺は誰もいないコートでラケットを握る。
…どのくらいやっていたのかは分からないが、ボールの跳ねる音と虫の音が聴こえる空間に俺の名を呼ぶ声が響いた。
「アーン?…てめーも自主トレか、真田ぁ」
壁から跳ね返ったボールをラケットで受け止め、真田の方を見る。普段よく見る立海のものとは違い、真っ黒のジャージだった。
今日、俺が顔と名前を一致させている他校の奴らの中でコイツとだけ一度も会話をしていない。神尾でさえ悪態をつきながら祝いの言葉を述べたと言うのに…。
何の用だという視線を送ると真田はゴホン、とわざとらしく咳払いをする。暗闇の中で奴の顔は見えないが、ひどく緊張した様子だ。珍しいこともあるもんだ、とからかってやろうかと思ったが先の言葉が気になって、黙って口を閉じる。
「あ、跡部!」
もう一度名前を呼ぶと、此方へと歩み寄ってきた。ドスドスと聴こえてきそうなくらい力強く足を踏み出し、徐々に近くなった真田の顔は、
少し、あか……い…?
「好きだ!結婚してくれ!」
「「……はぁっ!?」」
俺の声と被ってガサッ、とコート横にある草むらから聞こえた声。
「何をしてるんだい?真田」
「幸村っ!?」
「弦一郎が混乱し、数段飛び越える確率は35%……。まさかこっちの方でくるとはな…」
「と、柳!?」
草むらから出てきたのは暗い真夜中に背中からさらにどす黒い何かを出す幸村と反対にブツブツと楽しそうに何かを呟きながらメモを取る柳。
想定外の人物の登場に驚きで先程の真田の一言が飛んでいった俺と顔を赤く染めたまま肩を掴み続ける真田。
※※※※※
諦めた跡誕……。
真→跡と言うより真→←跡みたいな感じにしたかった
※※※※※
prev
/
next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -