やっぱり君が好き
淡白で話すことも触れることも少ない俺らやったから、今まで誰にもバレずに付き合ってこれたのかもしれない。
周囲に気付かれない様付き合うのはお互い承知済みだ。
ーーーーでも、
時々、本当にたまに、
力強く、抱き締めたくなる
やっぱり君が好き
全体での練習が終り、俺はゆっくりとシャワーを浴びた。ベタつく汗が流れ落ちる感覚は気持ちが良い。
夏が近づいているのか最近は気温が上がり少し運動するだけでも汗が出る。髪と身体を軽く洗い終り、制服を着替えてる頃にはほとんど人がいなくなっていた。思ってたよりシャワーを長く浴びすぎたみたいだ。
部室には俺以外誰もいない。帰ろう思うと微かにボールを打つ音がした。
(…跡部の奴、まだやっとるんや)
いつもなら日吉や樺地も残って練習しているのだが、今日は二人とも用事があるらしく早々に帰っていったのを忍足も見た。なので今日残っているのは跡部だけとなる。
(あー…なんやろ、急に本読みとうなった)
そんな事を思って、鞄の中に常備している恋愛小説をいつもはジローが寝ているソファに座って読み始めた。
*****
「あーん?何してんだ忍足。てめぇがこんな時間まで残ってるなんて、珍しいな」
暫くすると跡部が部室の扉を開き、少し驚いた様な表情をしてそう言った。
まぁどっちでもいいがな、と言うとスグに此方に背中を向ける。無意識に跡部の首筋に目がいき、息を吐くと思ってたより熱いものが出た。
「跡部…」
熱っぽい息と共にその言葉を出すと跡部の肩が上がる。
「……今、悪寒がしたんだが、気のせいか?」
「悪寒って…失礼な奴やな。まぁええわ」
来て、と一言言うと跡部は何も言わずに目の前に来る。跡部の鎖骨の辺りにはまだ汗が残っているのが見える。早くシャワーを浴びなければ汗が冷えて風邪を引いてしまう。そんなことを頭の中で考えてはいるのだが、身体は跡部のことなんか気にせず、彼の手を引いて自分の身体に納めてしまう。
「なっ、テメェ!離せ!!」
いきなりのことに驚いた跡部が腕の中で暴れるが、俺はそれに対抗するかの様に抱き締める腕をさらに強める。
「嫌なん?」
「汗かいてんだ、嫌に決まってんだろ」
確かに、抱き締める跡部からはいつもの香水の匂いは微かにしかせず、いつもより男臭い。
「…アカン、欲情する」
「は?」
「なんやろ、いつもと違った跡部の男らしさにムラッときた」
「っ、変態」
「顔真っ赤にされるともっと煽られるんやけど…」
「テメェ、少し黙りやがれ」
「ハハッ、可愛えー」
こんな風にとりとめのない話をしていると、結局帰る頃には外は真っ暗で星が出ていた。時計を見るともう10時で、遅くなってしまったことに対して跡部に謝る。
…許さねぇ、なんてボソリと呟く跡部に思わず苦笑いをしてしまうが、何も言わずに一緒にいてくれた跡部が愛しくて、
何よりも、誰よりも好きだと実感させられた
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配布元:
Poison×Apple
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