引かれるモノ
正直に言って、大会は退屈だ
そう思った一番の原因は試合に出られないから。入学する前から中学は上下関係が厳しいと聞いていたが、勝負事にまでソレを持ち出してくるのは心底迷惑な話だと入部してから思った。
実力は多分、自分の方が上なのに…、なんて思うがそんなことを軽々しく口に出してしまえば真田からの鉄拳をくらうことになる。
(自分だって試合したいと思っちょるくせに…)
心の中で呟くと同時に、立海側の応援席が歓声を挙げた。チラリとコートを見るとシングルス3がようやく勝利していた。
(…まだ一ゲーム)
この炎天下の中でまだこの状態が続くのかと思うと目眩がする。
頭は一瞬でサボる方に考えが行き、俺は一勝を喜んでいる奴等の間を気づかれないように通っていき、徐々に立海のコートから離れていった。
途中、少し柳と目が合ったような気がするが…気のせいじゃろ。
++++++++++
どこか涼しい場所はないかと探すがなかなか見当たらない。何となく涼しそうな方向へ歩いていたつもりだがハズレのようだ…。
引き返すかと思った時に、近くのコートから大きな声が聞こえてきた。
ーーーーーーひょう、てい?
確かそんな学校があったようなと思い、声がした方を見た。
強豪校だが、部長の座を一年に取られた学校。柳が偵察に行った学校の一つだが、警備が厳重であまりデータが取れなかったと言っていた気がする。
頭の中でそんなことを思っている間も続いていた氷帝コールに面白そう、とその一言が浮かんだ。
ここまで来たついでだ、データでも取っておいてやるかと意気込みながらコートに近付く。
客席に着くとパチンッと無駄に綺麗な音が耳に入り、遅れて氷帝コールが止んだ。………が、止んだと同時に氷帝側のコートに立っていた少年がジャージを高く放り、落ちたジャージをメッシュの派手な先輩がそれを拾う。
「勝者は、俺だ」
途端に沸き上がった黄色い声に耳を塞いだ。いろいろとツッコミたい所はあったが、それよりも豪快で派手な応援と黄色い声援を受けた男がどんな奴なのかという方に気が行き、少し前に身体を傾け、少年の顔を見た。
「っーーーーーーーー」
……言葉が出ないとは、こういうことを言うのだろうか。
光に当るとまるで黄金のように輝く髪に青く透き通った眼…。そして地面から真っ直ぐ伸びた身体は彼の全てを際立たせ、そして周りの全ての人間を魅了した。
試合が始まっても、無意識に目が彼を追ってしまう。
気付けは5ー0。彼の圧勝は目に見えて分かっていた。
「仁王くん!」
「うおっ!?」
いきなり後ろから声をかけられ、思わず声を上げる。
後ろを振り向くと最近ダブルスを組んだ柳生が腕を組んで立っていた。
「いつの間に抜け出したんですか!真田くんがカンカンになってましたよ!」
早く戻れと言う柳生に仕方なく付いていく。心内では、さっきの少年の事を思い出していたが。
「おや、仁王くん。今日は猫背になってませんね」
「え、……まぁ、の」
「とても良いことです。これからも心掛けるようにした方が良いですよ。常日頃から背骨を曲げていますと骨格がーーーーー」
いつもの様に口煩い柳生を余所にあの少年を頭に浮かべた。
容姿も良かったが自分の中に残ったのは、あの真っ直ぐ伸びた立ち姿だった。
どっしりと、
きっちりと、
すらっと、
ふんわりと、
どの言葉も当てはまらない。だが、確かに引かれるモノがある、あの姿を思うと無意識に背筋が伸びていく。
憧れか、それとも願望か…
理由は分からないが、
コートで見たアイツを
ーーーーーーかっこいい
そう思ったのは、確かだった
※※※※※
メッシュ先輩初登場…かな?いつかメッシュ×跡部とか書いてみたいですね。
私の中でのメッシュ先輩は美人オカンみたいなイメージ。滝さん的な…。
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