クロッカス
花は見た目の華やかさと辺りに漂う香を楽しむ植物だ。
心に癒しをくれる花もあれば美しくも棘のある危険な花もある。
そんな花を僕は好み、
ーーーーそんな花を君は嫌った
クロッカス
華やかな彼には花がよく似合っていた。
部長という立場でよく話はしたが、その中でも花の話はテニスの次くらいにしたものだ。花のことには手塚も真田も入ってくることができず、二人だけでよく盛り上がった。
俺にとっては、何よりも大切な空間と言っても過言ではなかったんだ……
「はい跡部、今日の分」
一束の花束を跡部に手渡す。あからさまに眉を寄せるがその姿さえも似合っていた。
嫌な顔をした跡部だが、意外にもすんなりと受けとってくれた。
「あれ、今日は素直に受け取ってくれるんだね」
「どうせ受け取らねぇと帰らないんだろ。…ったく、よくもまぁ毎日こんなん買う金があるもんだ。分かってんのか、今日で二ヶ月だぞ」
「もうそんなに経つんだ。どう?跡部は何か変わった?」
俺は…何も変わらないよ。
跡部が花を嫌いになってから、跡部が花を拒むようになってから何も変わらない。
君に花を贈り続けて、たわいない話をする。……君が花を好きになってくれるまで変わる気すらないんだ。
ねぇ、跡部。君はどう?
「変わらねぇよ、何も。」
「………」
「花が嫌いなこともな」
…あぁ、分かってたよ。
だって前は、俺が君に花を渡すと喜んでくれていた。
香を楽しみ、温かい笑みを溢していた。
そして滅多に言わない感謝の言葉を述べて、
次の日には倍以上にして素敵な花を俺にくれたんだ。
「そうか……残念だ」
分かってはいたけどやっぱり少し寂しくて、ここを立ち去りたいという気持ちが溢れ出た。
二三言別れの言葉を告げると後ろを向く。
「…ただ部屋に、
花が増えただけだ」
ーーーーーーーーーー…っ
振り向くと跡部の姿はなくなっていた。
それでも最後の言葉で俺の脳裏には、跡部の部屋に綺麗に手入れされた俺の贈った花が部屋を飾っている様子が浮かび上がった。
無意識に口許が緩んで少しだけ笑ってしまう。
ねぇ跡部、またいつかあの頃の様に一緒に話そう。
その時を、楽しみにしてるよ
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クロッカス
(あなたを待っています)
花って言葉を使うと文章が綺麗に見える気がするけど駄文であることには変わりない。
配布元:
秋桜
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