[ジロ跡]2012.10.04
いつものように車で登校中、ふと窓の外を見るとあることに気がついた。朝練がある俺様は他人よりも早くほぼ無人の学校に着く。それが今日は早くから登校している氷帝の生徒が目立つのだ。何やら急いでいるようでそれを車が抜かすとさらに焦った顔になる。
その光景に口許が少し緩んだ。
ーーーーー10月4日
俺様がこの世に生を授かった日である今日、朝から氷帝はいつもにない賑わいを見せていた。さっきもいった通り、いつも俺様が登校する時間はあまり人がいないが、今日だけは全校生徒のほぼ半分が既に来ており、校舎に入ると…いや正門をくぐった途端に祝福の嵐。
また少し緩んだ口許。全員…とまでは言わないがこの殆どの生徒が俺様の生誕を祝っている。自惚れでも何でもない、この現実が物語っていた。
いつしか氷帝コールに変わっていた祝福を指を鳴らして静める。
ここで、生誕祭の幕開けに相応しい俺様からの有難いお言葉ーーーー「あっとべ〜おはよ〜!」
ーーーーーーいきなり後ろから勢いよく抱きつかれ、俺は手を上に高く掲げたまま地面に頭を強打することとなった。
*****
「……最悪な一日だったな」
「まだ授業も始まってもないCー。決め付けんの早いよ、跡部」
その決め付ける決め手となったのはお前だよ。
そんな言葉を吐いてもこの空気を読まず抱き着いてきた相手ーーーージローはいつもの人懐っこい笑みをこぼすだけだった。
因みに現在いる場所は保健室。
怪我をしたのは俺でなくジロー。
顔面をぶつけたにも関わらず、奇跡的に掠り傷一つない俺様は流石としか言いようがない。その代わりにジローは腰に抱き着いていた手が地面と俺様の間に挟まれ擦り傷を負った。自業自得だ。
「…そういえば、ジロー。今日は珍しく来るのが早かったじゃねーの」
「えー、だって今日跡部の誕生日でしょー?昨日早く寝て頑張って起きたんだ〜」
傷の手当てが終わり、朝練が出来る時間でもなくなったのでとりあえず教室に行こうと立ち上がったとき、答えは何となく分かってはいたが取りあえず聞いてみると予想通りの返答と共に褒めてと言わんばかりの顔が返ってきた。
その姿が愛犬と被って見え、しょうがなく頑張った褒美としてジローの頭を撫でる。フワフワとしてクセになる触り心地だ。
「ホント…犬みてぇ…」
ポツリと呟いた言葉が聞こえていたのか、ジローは少し顔を上げ此方を見る。何か言いたげな目をしているので撫でる手を止めた。
「っーーーーー」
不意打ちで二人の唇が重なる。それはスグに離れていったがジローは不満そうな顔をした。
「何だよ…」
「んー、よく考えたら今日最初にキスをしたのは俺じゃなくて地面なんだなぁ…って、嫉妬した」
「そっちかよ…」
ってきり犬扱いしたのが気に食わないのかと思ったが違ったようだ。相変わらず何考えてんのか分からねぇ奴。
だけどそんなとこも可愛く思えて、また頭を撫で始める。また気持ちも心も落ち着いていき目を閉じてその感覚だけを感じる。
「跡部、今日はゆっくりしてね。せっかく誕生日なんだC」
学校全体に流れているチャイムが遠く聞こえる。
だんだん瞼が重くなり目を開けるのが億劫になる。そういえば昨日も遅くまで資料の整理をしていたんだと思い出した。
「ここならベットもあるC〜。今日だけは仕事なんてサボっても皆許してくれるよ」
ジローの声が子守唄の様にゆっくりと頭の中に流れるように聞こえてくる。
「おやすみ〜跡部」
今日だけの休息記念日
(おやすみ、そして)
(おめでとう)
※※※※※
お
め
で
と
う
!!
私が言いたいのはこの五文字+αと間に合ってよかったということだけです。
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