見上げた空にビルはない
※原作の設定総無視です。
駅から降りるとムワッと熱気がした。周りを見ると電車を待っている者は少なく、閑散としていた。
駅を出てまず見えたのは山だった。…いや、建物もある。
ただ、建物の屋根は低く、山の存在感が凄かっただけだ。人も少なく疎らで、しかも通っていた人は高齢者ばかり。
「(……少子高齢化を表したような光景だな)」
この地域に来るのは久しぶりだ。
昔、ここに住んでいる祖母の家に遊びに来ていた…と聞かされているが、正直そんな記憶はない。
まぁ、1・2歳の時に数回来ただけでその後は一度も行ったことがなく、俺は今までずっと東京で暮らしてきた。
だからこんなに山に囲まれ、閑散とし、虫があちこちに飛んでいる空間なんて知らない。
そんな俺が今日、この地に降り立ったのは祖母が倒れたことが原因だった。流石にもう歳である祖母は先週、外出中に倒れてしまい、病院に入院することになったのだ。
祖母の世話と、この町から出たくないという祖母の願いを叶えるために只今国外で働いている両親の変わりに俺はここにやって来たというわけだ。
梅雨が終わり、7月という中途半端の転校となり、東京の奴等は悲しみ、祖母は電話ですまないと謝った。確かに名残惜しいとこもあった、が、会うことは無くても電話やメールで仲良くしていた祖母の為だ、そう意気込んでここまで来たわけだが……
「ちっ、何でこんなにも虫がいんだよ!!」
さっきから飛んである蚊に嫌気がさしてくる。さっきも駅で虫の死骸を発見し、ここに着いて僅か2分、既に帰りたいという気持ちが跡部の中で渦巻いていた。
「って…ウダウダ言っても仕方ねえな。取り合えず行くか」
車一台も通ってない中、タクシーも捕まえられそうにないのでしょうがなく歩いて行こうとし、一歩踏み出した。
「おにーさん、足元にムカデがいるよ〜」
「…っ〜!!っっーーーーー!!」
「えっ!うわっ…ちょっ」
見知らぬ男の声が聞こえたと同じタイミングで足元に見えた細長い物体。それをアレだと判断した瞬間、勢いよく後ろに下がると何かにぶつかり後ろに倒れた。
…しかし、痛みはやってこないことや下から…というか耳元から声がすることに、俺様は瞬時に今の状況を把握した。
上半身だけ体を起こし、後ろ斜め下を見る。
「へぇー、君中学生だったんだ、全然気づかなかったなぁ。なら俺と同い年くらいだね」
「そのセリフ、そっくりそのまま返すぜ」
ーーーー何故こうなった…
心の中で呟いた言葉は溜め息となって口から出ていく。
このどうみても中学生に見えない(人のことは言えないが…)コイツは千石と名乗った。初対面の奴相手によく名乗れるなと思ったがそこはどうでもいい。
確かに此方からぶつかってしかも上に被さった状態になってしまったことに関しては悪かったと思っている。そしてそれについてはちゃんと謝った。
それなのに…
「(何でついてくんだよ!)」
「いや〜、俺ね、家がコッチなんだ。君もそうなの?この辺じゃあんま見かけないけど…」
……まぁ、さっきまでの疑問は解決した。が、それにしても別に話し掛けてくる理由はないだろ。
さっき会ったばかりで、しかも向こうに取っては最悪な部類に入る出会いだろう(俺も転けるはめになったわけで、あまり良い気分でない)。
ーーーーと、そっくりそのまま千石に言ってやると
「あぁ、あれね。
別に気にしてないよ。こっちが行きなり話し掛けたせいであぁなったわけだし。
それに同じ中学生同志、仲良くやろうよ。ホントは君が女の子だったら一番良かったんだけどね」
笑いながらそう言われた。
最後の一言は余計だっが、オレンジ色の頭をしている割には良い奴そうだ。
「いやー、それにしても最近暑くなったよねー」
手でパタパタと仰ぎながら千石は上ーーーーーーつまり空を見上げた。
「お、いい天気」
ずっと空を見上げてるものだから、思わずつられて見てみるとーーーーーーーーー
「っーーーーーーーー」
青空。
雲一つない…とは言えず、所々疎らにある雲が空の青さとマッチしていた。
純粋にそれを、キレイだと思った
そう言えば、向こうにいた頃はこんな風に空を見上げたことが少なかった。
前ばかり見て、進んでいた。
別にそれが悪いことだとは言わない。寧ろ俺はそうやって生きてきたんだ。文句は言わせない。
ただ、立ち止まって見上げた空はこんなにも透き通っていて、
「…あぁ、何か違うと思ったら建物がねえな。空しか見えねぇ」
「え?それは田舎だってとこと?確かに田舎だけど…」
「ちげーよ」
高い高層ビル。
それが無いだけ。それなのにこんなにも世界が広く感じる。
それが心地好くて俺は目を閉じると、風が吹いて山の匂いがした
※※※※※
友達に田舎者は都会に行くと(看板?とか見るために)上を向く、って聞いたので、じゃあ都会の人は上を見ないのか。という逆転の発想。
5月頃にその話を聞いて上を見るとちょうど空がキレイな青色でした。
その二つが偶然重なりこんな妄想に発展。因みに最初は忍足でしたが、千石さんの方が書きやすかったので千石さんに。
田舎って空とかキレイだぜ!!ってことをアピールしたかった。山しかないぜ!!ってこともアピールしたかった。
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