み ず か
INDEX | about | main | link | contact
shortcuts : 庭夢  唄聴  幽霊  12恋


庭には夢が埋まってる
花びら一枚分の恋  [2/9]

 一度だけ彼女と目が合ったが、気まずいと感じる前に逸らされてしまった。
でもなんとなく、私に対して好意的でない理由がわかる気がする。

「そっか。さすが瑠美、詳しいね」

 そして女子のかたまりは、瑠美と呼ばれた女子に連れられて離れていった。
一言も話せないまま呆然とした私に顔を近付け、絢が「なぁに、アレ」と耳打ちする。私は首を傾げて眉を寄せた。

「あの人、そんなに人気あるんだ。どこがいいんだろ」
「そんなこと言ってるの清花くらいだよ。でもいいなぁ、私も恋愛したいなぁ」
「夏休み中に別れたばっかりなのに?」
「それとこれとは別」

 フフッと悪だくみをするように笑い、絢は「もう目星はつけてあるの」と付け足した。

 絢の悪い癖は、ゲームのように恋愛することだ。
相手を決めて近付いて、向こうが振り向いた頃にはもう飽きてしまっている。
だからたとえ付き合うところまでいったとしても長くは続かない。
そもそも、付き合うところまでいかないか、告白されても振ってしまうかどちらかだ。

 そのせいで、絢は一部の女子からあまり好かれていないらしい。
でもなぜか男子からは変わらず人気がある。
本当に男子はおかしな生き物だと思う。
そしてそれ以上に、絢はおかしな女の子だった。
彼女がしているのは恋愛なのか、それさえよくわからない。

「伊織くんでしょ」

 声を抑えてこっそりつぶやくと、絢は少しだけ驚いた顔をした。

「何それ、女の勘?」

 絢はいつもちゃんとは答えない。
匂わせて匂わせて、答えのギリギリまで近付けるだけ。
たぶん男子相手にもそういう話し方やメールをしているのだと思う。
男子には効果があるみたいだけれど、そういうところが癇に障る女子もいるのだろう。

「勘っていうか、なんとなくわかった」
「ふぅん。清花もだんだん成長してるみたいね。須藤くんのおかげかな」
「誰がっ、あんなやつ」

 ムッとして絢をにらむと、彼女は楽しそうにコロコロと笑った。
それを見ていたら怒るのも馬鹿らしくなって、結局私も笑ってしまった。

- 28 -


[*prev] | [next#]
[bookmark]


BACK
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -