庭には夢が埋まってる 花びら一枚分の恋 [2/9]一度だけ彼女と目が合ったが、気まずいと感じる前に逸らされてしまった。 でもなんとなく、私に対して好意的でない理由がわかる気がする。 「そっか。さすが瑠美、詳しいね」 そして女子のかたまりは、瑠美と呼ばれた女子に連れられて離れていった。 一言も話せないまま呆然とした私に顔を近付け、絢が「なぁに、アレ」と耳打ちする。私は首を傾げて眉を寄せた。 「あの人、そんなに人気あるんだ。どこがいいんだろ」 「そんなこと言ってるの清花くらいだよ。でもいいなぁ、私も恋愛したいなぁ」 「夏休み中に別れたばっかりなのに?」 「それとこれとは別」 フフッと悪だくみをするように笑い、絢は「もう目星はつけてあるの」と付け足した。 絢の悪い癖は、ゲームのように恋愛することだ。 相手を決めて近付いて、向こうが振り向いた頃にはもう飽きてしまっている。 だからたとえ付き合うところまでいったとしても長くは続かない。 そもそも、付き合うところまでいかないか、告白されても振ってしまうかどちらかだ。 そのせいで、絢は一部の女子からあまり好かれていないらしい。 でもなぜか男子からは変わらず人気がある。 本当に男子はおかしな生き物だと思う。 そしてそれ以上に、絢はおかしな女の子だった。 彼女がしているのは恋愛なのか、それさえよくわからない。 「伊織くんでしょ」 声を抑えてこっそりつぶやくと、絢は少しだけ驚いた顔をした。 「何それ、女の勘?」 絢はいつもちゃんとは答えない。 匂わせて匂わせて、答えのギリギリまで近付けるだけ。 たぶん男子相手にもそういう話し方やメールをしているのだと思う。 男子には効果があるみたいだけれど、そういうところが癇に障る女子もいるのだろう。 「勘っていうか、なんとなくわかった」 「ふぅん。清花もだんだん成長してるみたいね。須藤くんのおかげかな」 「誰がっ、あんなやつ」 ムッとして絢をにらむと、彼女は楽しそうにコロコロと笑った。 それを見ていたら怒るのも馬鹿らしくなって、結局私も笑ってしまった。 [*prev] | [next#] [bookmark] BACK |