み ず か
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庭には夢が埋まってる
花びら一枚分の恋  [1/9]

 夏休み明けのテスト結果は須藤英知の圧勝だった。
予想外と言うべきか、当然と言うべきか。
『1』の傍らに誇らしく記されたその名前には一切の曇りもなく、『2』の隣の自分の名前だけがくすんで見えた。
あんなに自信があったのに。
三週間ずっと待ち望んでいた結果発表は、いつも通り敗北感しか与えてはくれなかった。

「そこまでへこむかなぁ。いいじゃん二番、嫌ならアヤと交換してよ」

 昼休みの教室は普段以上に騒がしかった。
朝のホームルームで話された修学旅行の話で盛り上がっているらしい。
当日までまだ一ヶ月以上あるし、その前に中間テストだってあるのに。
けれど、浮かれた男子たちが誰かの机に集まって話しているのを見ていると、なんだか羨ましいような気分にもなる。
私もあれくらい楽観的になれたらいいのに。

「聞いてる?」
「聞いてるよ」

 頬杖をついていた顔を上げ、大きく伸びをする。
前の席の椅子に横向きで座っていた絢は、そんな私をいぶかしげな目で見据えて頬を膨らませた。

「そんなに勝ちたいなら、必勝法でも探ってくればいいじゃん。隣に住んでるんだからなんとかなるでしょ」
「探ってどうすんの。どうせだったら邪魔してくるわ」
「おー、怖い怖い」

 そんな話をしていると、教室内にぽつぽつと点在した女子のかたまりの一つが私たちの側までやってきた。
ほとんど話したこともない子ばかりだ。

「ねえ、遠野さん。須藤くんちの隣に住んでるってホント?」

 リーダー格らしい子が、探るような上目遣いでそう尋ねてきた。
私は絢と顔を見合わせ、それからその子に向かって小さく頷いた。
珍しく話しかけてきたと思ったら、どうやらそっちがお目当てらしい。

「そうなんだ!じゃあ幼馴染ってことだよね。いいなぁ、羨ましいー」

 すると彼女はグループの子達と顔を合わせて「ねぇ」「いいねぇ」と勝手に話を進め始めた。
違うよ、と否定する隙もくれずにきゃあきゃあと笑い始める。
その勢いに押されて黙り込んでしまった私の代わりに絢が答えようとしたとき、彼女らの後ろからキンと鋭い声が突き抜けた。

「違うよ」

 振り向く彼女らと一緒に目を向けた先から、こちらに向かってまた別の女子が近付いてきていた。

「須藤くんは今の家に引っ越したばかりだもの。まだ半年くらいしか住んでない」

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