み ず か
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庭には夢が埋まってる
神様のパズル  [5/7]




 翌日の登校ほど気の進まないものはなかった。
仮病を使って休もうと試行錯誤はしてみた。
けれど「食欲ない」と言ったすぐ後にお腹が鳴ってしまったし、体温計はお茶につけすぎて四十度近くなってしまったし、結局お母さんに怒られただけだった。

 しかもそんな風にのろのろしていたせいで、家を出たのは遅刻寸前。
全力で漕いだ自転車が学校に着いたのは、始業のチャイムが鳴る五分前だった。

「珍しいこともあるもんね、清花が遅刻寸前なんて。ヤリでも降るんじゃない?」

 一限目の授業が終わってすぐ、やっと一息つけた私の席まで絢がやってきた。
夏休みが明けたら茶色くなっていた彼女の髪は、また一段と短くなっている。

「ほっといて。今、自己嫌悪中なんだから」

 机の上に顔を乗せ、私は大きく息を吐いた。
視線のすぐ先には二限目の数学の教科書とノート。
とても頭が使える状態ではない、でも乗り切らないといけない。
数学は一度わからなくなると後を引く。

「時間ギリギリだったのがそんなにショックなの?」
「ううん、それとは別」
「じゃあ昨日、須藤くんと喧嘩したのが効いてるんだ」

 なんで知ってるの、と顔を上げる前に、絢は私の頭を慰めるように優しく叩いた。
顔を上げた私の目に映ったのは、彼女の得意なあの誰もが抗えない笑顔。

「やっぱりなぁ。絶対清花だと思ったんだよね。須藤くんにつっかかる女子なんて、他に想像できないもん」
「だからなんで知ってるの、それ」
「その辺で話してるの聞いたの。たまたま見かけたらしいけど、その子須藤くんのこと気になってるらしくて、みんなに文句言ってたよ。すごい傷ついた顔してたって」

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が締め付けられたように苦しくなった。
昨日の出来事がフラッシュバックする。
「大嫌い」と言われて傷ついたのは彼の方なのに、どうして私の胸まで痛くなるのだろう。
後悔したって、もう遅い。

 視線を落として黙っていると、しばらくしてから絢が私の肩を軽く叩いた。

「何?」
「トイレいこ」
「えぇ、今はちょっと……」
「いいから」

 しぶしぶ立ち上がると、絢は私と腕を組み、なぜか近くにあるトイレとは逆方向に廊下を進み始めた。
廊下にはちょうど教科書類を持ったどこかのクラスの生徒がわらわらと歩いている。
すれ違うその顔の群れが何組のものか気付いたとき、それまでなすがままにされていた私の足が急に重くなった。

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