み ず か
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庭には夢が埋まってる
神様のパズル  [3/7]

「ここで会ったの初めてだ」
「……だね」

  私は閉じかけたドアへ一歩を出し、フェイントをかけられたようにして再び開いたドアを出ると同時に傘を開いた。
当然のように彼もその後に続く。
歩みを進める背中の向こうで、雨音に混じってまた機械音がした。

「歩くの速いね」
「そうかな」
「あ、そこ水たまり」

  ふと足を止めて下を向くと、言われた通り大きな水たまりがあった。
水面にぼんやりと映った薄緑の傘に目を取られていると、その隣にすっと白い影が映りこむ。

「ねぇ、なんで避けんの」

  不意打ちだった。
どきっとしてそのまま何も言えずに止まっていると、車のエンジン音が次第に近付いてきた。
慌てて顔を上げると、傘を持つ手を彼につかまれた。
そのまま車を避けるようにして駐車場を抜け、歩道へと連れて行かれる。
私も彼も終始黙ったまま、ただ強くなり始めた雨の音を聞いていた。

「俺のこと嫌いだって言ってたけど、あれホントなんでしょ。俺、サヤカちゃんになんかした?」

  歩道をゆっくりと歩きながら手を離されたとき、彼の声が傘の上から降ってきた。
前に話したときとは違う真剣な声色で、思わず息が詰まる。

  どうして関わらないと決めたばかりなのに、こんなことになっているのだろう。

「別に、何も」

  しぼり出した答えはそれだけだった。
ちゃんと答えなければいけない気がするけれど、本当のことは言えない。
ちっぽけなプライドをさらけ出し、それを目の前で砕かれるのはさすがに辛い。
ぽつぽつと足を進めていくと、うつむいた視線の少し前の方に彼のスニーカーが映った。

  でも、彼は私の言葉に納得などしなかった。

「じゃあなんで俺のこと嫌いなの」
「……なんとなく」
「なんとなくで人のこと嫌いになんの?」
「そういうこともあるでしょ」

  ないよ、と彼は言い切り、それがやけに私を苛立たせた。

「あんたこそ、なんでそんな私にこだわるの?ほっとけばいいじゃん」

  喧嘩ごしな言葉に、彼のスニーカーの爪先が私の方を向いてぴたりと止まる。
私もその場で立ち止まり、顔をあげて彼を見据えた。
どちらの表情にも友好的な色はない。

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