庭には夢が埋まってる パフェもピンクも選べない [7/9]ふぅと一息ついて、ワンピースを元の位置に戻す。 あんなに絢が薦めてくれたものだし、少し名残惜しいけれど、やっぱり似合うとは思えない。 もっと細かったら、もっとおしゃれな髪型だったら。 虚しい願いは空に浮いて、シャボン玉のように消えた。 そうこうしているうちに聞き慣れたヒールの音がして、苦い顔をした絢が戻ってきた。 「お待たせー。もう、お母さんたら話長いんだから」 「やっぱり塾の話?」 「ううん。なんか今日はお父さんが早く帰ってくるから、どっかに夕ご飯食べに行こうって。塾のことはすっかり忘れてるみたい」 ちょっとラッキー、と彼女は歯を見せて笑った。 つられて私も微笑むと、彼女は更に安心したような表情をした。 「じゃあそろそろ帰ろっか。うちも今日は私がご飯係だし、早目に帰らないと」 「あ、ちょっと待って。さっきのは?」 「戻した。だからまた今度ゆっくり来ようよ」 絢は「えー」と本当に残念そうな顔をしたけれど、それをなだめながら私たちは店を出た。 終わりかけた夏の夕方はいつもより少しだけ涼しくて、そろそろカーディガンの出番かな、なんて思った。 [*prev] | [next#] [bookmark] BACK |